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コロナで行動が制限され、夫がうつっぽく…自由のないカルト村で生まれた高田さんが感じた「村で暮らして良かったこと」

『カルト村の子守唄』作者・高田かやさんインタビュー#3

source : ライフスタイル出版

genre : ライフ, ライフスタイル, 娯楽, 読書

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様子がおかしいふさおさん

 でも、予約を1年前から入れていたゴールデン・ウィークの旅行を2年続けてキャンセルした頃から、ふさおさんの様子がおかしくなって、数日前に言ったことやあった出来事が、頭からポンと抜け落ちてしまうことが立て続けに起きました。本人にはあまり自覚症状がないようでしたが、心配になって調べてみたら、どうやらふさおさんの様子は「軽いうつ症状」に近いと分かりました。

 その時初めて知ったのですが、普通の人は「自分の意思とは関係なく行動が制限されている」ということが、ものすごいストレスになるんですね! 物心ついてからずっと村にいて、行動に制限がかかっている状態の方が普通だったため、他の人にとってはそれが追い詰められるほどのストレスだと分からなかったのです。「道理で村の話に一般の読者の方が驚くわけだ」と少し謎が解けた気がしました。

 これまでのインタビューで、「村で暮らして良かったことは?」と聞かれることがあり、答えに困っていたのですが、今度聞かれることがあれば「コロナ禍の行動制限が別段辛くないことでしょうか」と答えることにします(笑)。

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カルト村で生まれました。

ささやかな計画で予定を埋める週末

――ふさおさん、大変だったんですね。

高田 ふさおさんが限界だったので、色々調べてちょっとしたことでも「計画を立てて実行する」ようにしました。今まで近すぎて行かなかったような日帰り入浴施設で1日のんびりしたり、車で誰もいない山奥の巨大ダムへ行って構造に感心したり、人がほとんどいない季節はずれに渓流沿いのキャンプ場へ行って紅葉を見ながらお肉を焼いて食べまくったり。あらかじめ何日もかけて1日のプランを綿密に話し合い、週末の予定をささやかな計画で埋め続けました。

 時間を潤沢に使った休日を過ごしているうちに、ふさおさんの記憶が飛ぶようなことも全くなくなりました。

 魚を取り寄せて料理することもふさおさんにとってストレス発散になったようで、魚を捌くのがめちゃくちゃうまくなり、お店のようなお刺身や魚料理を家で安く食べられて最高でした! とくにおいしかったのは新潟の漁師さんの釣りサワラ! コロナ禍がなかったらきっと知ることのなかった味でしたね。