阿部恭子さんはこれらの事件について、以下のように解説する。
厳しく躾けた娘がなぜ
ふたつの嬰児遺棄事件の家族は一定の社会的地位を有しており、どちらかというと厳格な家庭でした。女性たちはきょうだい間で差別を受けており、家族と同居していたにもかかわらず、家庭に居場所はありませんでした。さらに、会社や学校でも孤立しており、頼れる存在が「男性」しかいなかったのです。
また、未婚の女性が産婦人科に行くと、すぐ噂になるような地域で、相談できる機関もなく、女性へのサポート体制は脆弱でした。
SNSは、数多くの情報や人との出会いを可能にする便利なツールで、リアルなコミュニケーションが苦手な人々にとっての居場所になっている面もあります。
一方で、性的搾取の被害を受けるケースは年々増えています。子を持つ親は心配だと思いますが、一方的に利用を制限したところで、リスクは減らないでしょう。
家庭でも性教育を
事件が起きたふたつの家庭に共通することは、性の話は家庭でタブーとされていたことです。セックスや妊娠については家庭で話しにくいと感じる人も少なくないのではないでしょうか。
かつては生理の話も男性にはタブーでしたが、近年の性教育では男子も一緒に教育を受けるようになりました。セックスや避妊、妊娠、出産についても男女で共有すべきという認識が広がっています。性に関する情報や男女が出会う機会は若者を取り巻く環境に溢れているにもかかわらず、認識が追いついていない家庭や、性についてオープンにすることに否定的な家族も存在しています。
地域に相談窓口を増やし、女性だけでなく男性も対象とした啓発活動を広めることによって、同種の事件を防ぐことができると考えます。
【前編を読む】《家族間殺人》「俺がちゃんと教育するから」交際相手の実家に寄生して家族を洗脳…一家が“邪魔者の排除”に至ったワケ