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《乳児死体遺棄》娘の妊娠に気づかない加害者家族の意外な“共通点”とは 「まさか、娘があんなことをしたなんて…」

『家族間殺人』より #2

2021/10/09
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女の子の仲間に入れず、男性と一緒にいるほうが楽だった

 裁判で執行猶予付き判決を得て、すでに社会復帰している絵美は、事件を起こした原因について、「女の子の友達がいなくて……」と、あっけらかんとした口調で答えた。絵美は、小柄で目のぱっちりとした美少女で、天真爛漫という雰囲気。間違いなく男性に好かれるだろうと思われた。

 絵美は、会社の計らいで事件以前に勤務していた職場に戻っており、仕事を続けていた。とりわけ気まずい様子もなく、迷惑をかけて申し訳ないといった様子も見られなかった。

 絵美は感情を言語化することが苦手である。ストレートすぎる表現しかできずに誤解を招くことも多く、小さい頃から女の子同士の仲間には入ることができなかった。男性と一緒にいるほうが楽だと感じ、いつの間にかセックスはコミュニケーションのひとつになっていた。

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両親は「お姉ちゃんのほうにばかり気をとられてしまって……」

 妊娠は初めてではなかった。最初の妊娠では、相手の男性が中絶費用を負担した。事件のきっかけとなった妊娠については、父親の可能性がある男性はひとりではなかった。それゆえ、心当たりのある男性に相談することもできなかったのだ。

 絵美は、会社でも男性社員からよく声をかけられ、肉体関係を持った相手もいた。社長は絵美の親戚で、事件後は同じことが起こらないよう、きちんと監督してくれているという。

 しかし、妊娠による体形や体調の変化に、同居していた家族は気がつかなかったのか。

「ちょうどその頃は真美の結婚が決まったばかりで、お姉ちゃんのほうにばかり気をとられてしまって……」

 絵美の両親は泣きながら後悔していたが、親の意識が姉にばかり集中し、絵美に無関心なのは幼い頃からだった。きょうだいに対する家庭での差別的な対応は、多くの家族間事件に影響を与えている。

 今回の事件で、真美の結婚は破談となった。

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