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《乳児死体遺棄》娘の妊娠に気づかない加害者家族の意外な“共通点”とは 「まさか、娘があんなことをしたなんて…」

『家族間殺人』より #2

2021/10/09
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親にバレるのが怖かった

佐藤奈々(仮名・16歳):スーパーのトイレで出産、ゴミ箱に遺棄

「まさか、娘があんなことをしたなんて……、今でも信じられません」

 四国地方に住む佐藤美奈子さん(仮名・40代)の娘・奈々さん(仮名・16歳)は、自宅近くのスーパーのトイレで出産し、遺体をゴミ箱に遺棄した。

 事件は、加害者が未成年者であったことから匿名で、大きく報道されることはなかったが、美奈子さんが生活する地域では大騒ぎとなった。

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「鬼畜!出ていけ!」

 事件後すぐに、美奈子さんの家には嫌がらせの電話が来るようになった。奈々さんは犯行動機として、「親にバレるのが怖かった」と供述していた。

 その報道を見た人が、インターネットの掲示板に「虐待親の責任」という書き込みをしたことがきっかけで、美奈子さんと夫は周囲から凄絶なバッシングを受けることになった。奈々さんには兄がおり、地元の進学校に通っていた。成績は常にトップクラスで地域で有名な生徒だった。

 周囲のひがみもあったのか、掲示板では兄を中傷する書き込みも続いた。そこには、奈々さんが兄から性的虐待を受けており、子どもの父親は兄だと書き込まれていた。そのせいで兄は学校で「レイプ犯」などと罵られ、上履きを隠されたり、同級生から無視されるようになった。

学校でいじめられて、SNSにのめり込み…

 奈々さんは、中学時代からいじめを受けており、高校でも友達がいなかった。クラスメート全員から無視されていたにもかかわらず、暴力はないという理由で、先生に相談しても対応してはもらえなかった。親に相談したこともあったが、「友達を作るより勉強が大事」と一蹴されていた。

 奈々さんは、SNSの世界にのめり込むようになり、現実の世界の寂しさを紛らわすようになった。自分の悩みをよく聞いてくれる男性と親しくなり、実際に会うようになった。会うようになると、嫌われるのが怖くて、肉体関係を拒むことができなかった。その後、生理が遅れていることを打ち明けると、その男性とは一切連絡が取れなくなってしまった。

 母親の美奈子さんは、特に異性との交際に厳しかった。奈々さんは、恋愛とは関係なく男の子の友達も欲しかったが、家に電話が来ても取り次いでもらえず、高校を卒業するまで交際厳禁だった。妊娠した事実など、打ち明けられるはずもない。

 

 奈々さんは、子どもをひとりで出産し、処分する覚悟を決めていたという。体形の変化は、服装で必死にごまかしていた。

「遺体を発見した人は、ショックでノイローゼになった」

「あのスーパーの近くで事故が起きたのは、死んだ子どもの霊が原因」

 など近所の人々から苦情が寄せられるようになり、一家は転居を余儀なくされた。

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