Q 小泉進次郎氏の「スピーチ術」は変化していますか?
衆院選の最中、テレビから流れる小泉進次郎さんの演説や会見でのちょっとした切り返しがとてもうまくて、聞きほれてしまいました。原稿を書くブレーンでもいるのでしょうか。池上さんが実際に取材をしている中で、小泉さんの「スピーチ術」は変化していると思いますか?(40代・女性・主婦)
A スピーチの訓練と下調べを欠かしません。
結論から言えば、原稿を書くブレーンはいません。いまの自民党で、あれだけのスピーチ原稿を書ける能力のある人はおそらくいないでしょう。自分で演説の中身を練っています。
彼はスピーチの訓練を欠かしません。寄席に足を運び、まくらの振り方や間の取り方を学んでいます。時間を見つけては落語のCDを聞いています。
彼は選挙の応援演説に行く際、必ずその土地の名産や名物を下調べして、それを演説の中に取り込みます。これは本来政治家の演説なら必ずやっておかなければならないことですが、なかなかできることではありません。今回の選挙中、安倍総理の演説を各地で聞きましたが、そうした準備はほとんどしていませんでした。
小泉氏の好感度が高いのは、まず自民党批判をして謙虚な姿勢を見せるからです。他の自民党の候補者たちが、自民党を自画自賛するのとは好対照です。これは、「人気者の進次郎を批判するわけにはいかない」という自民党内の空気があることを察しているからできることです。
また小泉氏は、他党や他の候補をあからさまに批判することも注意深く避けています。他党や他の候補者を批判するのは容易ですが、聞いている人はあまりいい気持にならないものです。
これまでの小泉氏の演説の骨子をパターン化すると、以下のようになります。
1 まず集まった聴衆をいじる
2 ご当地の方言を使う
3 ご当地の名産を食べてきたと言って聴衆を喜ばせる
4 最近の自民党の批判をする
5 野党と切磋琢磨して自民党は良くなっていくので応援してほしいと謙虚に頼む
6 なぜここに応援に来たかを説明する。「日本のために、この候補者を当選させなければいけないから応援に来た」という言い方で
以上のことを、短い言葉を連ねて表現する。
政治家の演説とは難しいものです。あまりにうまいと、かえって鼻につくこともあるからです。聴衆に「うまい」と思ってもらうことは大事ですが、「うますぎる」と思われては逆効果なのです。
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