いろんな想いが溶け込んだ『SMILE~晴れ渡る空のように~』
冒頭のパンチの効いた楽曲『Soulコブラツイスト~魂の悶絶』から、華やかさ際立つ『炎の聖歌隊[Choir(クワイア)]』、聴く者の魂を快く鎮めていってくれる『鬼灯(ほおずき)』までの6曲は、まさに粒揃い。
とりわけ『SMILE~晴れ渡る空のように~』は耳覚えある向きも多いはず。今夏の民放五輪中継でも盛んに流れていた、あの曲だ。
あれはもともと東京五輪に向けて、“民放共同企画「一緒にやろう」応援ソング”としてできた曲でしたからね。2020年1月の民放5局同時生放送特番で初披露したりと、ちょっとした「鳴り物入り」のデビューをさせていただきました。
さあこの曲とともに五輪でいいもの見せてもらいましょう! と思っていたら、あれよという間に延期が決定したのは想定外でした。曲のほうは今年の五輪中継でも引き続き使っていただいて、ありがたかったです。
応援ソングとして構想したわりに、この曲はただ勇ましく晴れがましいだけじゃないねと言われたりもします。その通りでして、そこには自分の心境も少し滲んでいます。
10年ちょっと前のこと。僕自身が病気になり、そのすぐ後に東日本大震災があったりして、その頃の僕は「心を折られた」感を強く抱いていました。
それに年齢を重ねると、世の中は能天気なことだけでできちゃいないというのも分かってきて、傷が癒えづらくなる。過去を背負ったり、引き摺ったりせざるを得なくなるといいますか。
とくに東日本大震災のことは、やっぱりいつまでも忘れられないままで。現地の感覚ではまだまだ回復の途上でしょうし、僕らは「復興世代」だと今もこれからも思っています。
今回の五輪だって、決定当初から「復興五輪」と言われてきましたよね。コロナ禍以前すでにこの五輪は、マイナスの部分も抱えながら開かれるものだった。
それで『SMILE~晴れ渡る空のように~』は自分の中で、いろんな想いが溶け込んだ、世の中全体への応援ソングとなっていったんです。勇ましいだけじゃなく聴こえるとしたら、その辺りのことを汲み取っていただけているのかなと思いますね。