「パラサイト」「BTS」数年がかりで築いた信頼感
もし「イカゲーム」が2年前に公開されていたら、ここまでの人気を得ていただろうか。おそらく本国を中心としたアジアの局地的な盛り上がりで終わっていた可能性が高い。
2020年に「パラサイト 半地下の家族」がオスカー受賞、音楽面ではBTSがアメリカを中心にトップスターの仲間入りをし、Netflixでも「愛の不時着」「梨泰院クラス」、世界10か国で1位を獲得した「Sweet Home-俺と世界の絶望-」など絶えず韓国ドラマのヒット作が生まれている。
直近2年間のうちに韓国発のエンタメコンテンツが世界市場から得た「信頼感」と「期待」は大きい。「イカゲーム」にとっては最大風速で追い風が吹きあれる状況である。
また「イカゲーム」のヒットにより、スタジオドラゴン、Jコンテンツ、地上波SBSなど今作とは無関係の企業も含め韓国のエンタメ関連企業の株価が軒並み急騰。1つのヒット作が業界全体に富を生み、また新たなヒット作を作るという“成功サイクル”が形成されている。
「イカゲーム」が示唆する「お金より信頼」という時代
ここからは少しネタバレが入るが(未見の人はご注意を)物語の終盤である人物が主人公にある問いかけをする。「君はまだ人を信じるのか?」この一言は作品全体の核であり、観る者にも自問させる。「お金か命か」「お金か愛か」というテーマはこれまでも多くの作品で扱われてきたが、「イカゲーム」においての最終的な賭け物は「信頼」であった。
信じるものがバカを見るような場面もある一方で、「信頼」が「金」を生むのも現代のリアルだ。何より「イカゲーム」の世界的ブームもこれまで積み重ねてきた、視聴者たちの韓国コンテンツに対する「信頼感」から生まれたもの。
「イカゲーム」によってさらに強固となった“成功サイクル”から、次はどのような名作が生まれるか楽しみだ。