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 加えて劇中のゲームが全て子供の遊びであり、韓国人でなくても理解しやすかった点も強みとなった。「だるまさんが転んだ(韓国語では「ムクゲの花が咲きました」)は日本でも馴染み深い遊戯であり、アメリカでは「レッドライト、グリーンライト」、フランスでは「アン ドゥ トロワ ソレイユ」、南米やアジアでも同様の遊びがあるそうだ。

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 もしゲームが複雑であったら字幕で説明するのに限界があったり、物語の本質や登場人物の心情よりもルールを理解する方へ意識が逸れてしまう可能性もある。ストーリーとゲームの形が“ユニバーサルデザイン”だったことも成功要因の1つだろう。

 そして「イカゲーム」にとってゲームの勝敗やインパクトある残虐なシーンはあくまで見どころの一部でしかない。それよりもセリフや描写の中に滲ませる現代社会に対する疑問やメッセージが作品のキモであり、簡単に消えてくれない後味を残している。

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各所に「社会問題と差別」を考えさせる仕掛けが

「イカゲーム」を見て最初に感じるのは映画「パラサイト 半地下の家族」と同様、格差社会へのアンチテーゼだ。主人公ギフンは無職でバツイチの40代男性、借金を抱えながら年老いた母親に頼って生きている。

 そんな彼もかつては自動車メーカーで働いていたが、ある出来事をきっかけに仕事を失っている。そこからの転落はあっという間で、妻と娘、安定した生活、ささやかな幸せが彼の手からこぼれ落ちてゆく。

 一度堕ちたら、そこから這い上がるのは大きな労力を要する。これは韓国社会だけではなく、日本や他国も同じではないだろうか。もしかしたらギフンは「明日の自分」かもしれないと思わせる。

「イカゲーム」に参加している面々は老人から若者、医者、脱北者、外国人、反社会組織の人間まで多種多様だ。彼らの“向こう側”にはゲームの様子を見張っている謎の組織が存在し、そこにも権力者と、その手足のようにこき使われる者という格差が存在する。まるで社会の縮図に思える。

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 見進めていくと格差問題以外にも、学歴差別、職業差別、外国人労働者や脱北者に対する差別などあらゆる差別問題が描かれていることに気づくだろう。具体的なエピソードを用意して分かりやすく表現されているものもあれば、さりげないセリフに滲むものもある。

 今作を見た知人たちと感想を言いあって気づいたが、人によって心に引っかかる「差別問題」が少しずつ違うことも興味深かった。個人的には性差別のシーンに心が痛んだが、それはデスゲームの異常な空間で行われていることが、現実の学校や会社でも同じように行われているのを知っているからだ。自らの心のアンテナがどんな社会問題に向いているか確認するために見るのもアリかもしれない。

 さらにそれについて誰かと話したくなってしまうのも「イカゲーム」の持つ力で、ゆえに視聴数が伸びたのだとも考えられる。