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「そうかな。君に関係あることだから君はここにいるんやで。君の強情に大人は振り回されている。僕は同じことを何度も言うつもりはないんですよ。だからこれ以上、突っ張るのは君にとって不利益だと思うよ。君にも反省してもらわないといけなくなる。言ってる意味は分かるよね? 1週間後にまた来るから考えておいて下さい」
ここにきてやっとわたしが闘っている相手が見えました。国家です。国が相手なのでした。彼らからは何が何でも絶対に伊藤さんを逮捕する意気込みを感じたのです。しかし、口を閉ざしたままだと何の罪も犯していない14歳の自分が5年間も少年院で過ごさねばならないのです。いくら考えたって納得できません。でも、今さら発言を翻すこともできない。それに、自宅へ戻ったところで父親や継母から邪魔者にされるだけです。未成年では家を出て自立するのも難しい。ならば、5年間少年院で沈黙を貫き通したっていいんじゃないのか。堂々めぐりで考えがまとまらず、どうすればいいのか答えは出ないままで1週間後を迎えました。
証拠を押収され、2人は未成年淫行と売春斡旋で逮捕
「こんにちは。あの、まだ決められないです」
「ああそう。もういいよ」
「何がもういいんですか」
「あれから君のお父さんの許可をもらって、実家の君の部屋を家宅捜索して調べさせてもらった。でね、出たんだよ」
「何が出たんですか」
「君は伊藤とプラザホテル内で天ぷらを食べて、同ホテルのスイートルームへ泊まってた」
どうして知っているの――
「君の部屋から伊藤名義のカードの明細書が出た。だからもう君の証言は必要なくなったんだよ」
釈放された翌日、自室のテレビを点けるとワイドショーが流れてきて、そこに映る景色に目を疑いました。