生家が大阪ミナミやキタの繁華街で宝石商をしていた関係で、幼い時からヤクザと触れ合う機会があった生島マリカ氏。13歳で親に家を追い出され、ストリートチルドレンになった彼女は宗教法人を運営する伊藤義文菅長の愛人となったのだが……。
ここでは生島氏が執筆し、ヤクザ取材を長年続ける鈴木智彦氏が監修を務めた書籍『修羅の花 山口組トップから伝説の経済ヤクザの息子までが素顔を見せた』(彩図社)の一部を抜粋。映画「マルサの女2」のモデルになった事件の背景を明かす。(全2回の2回目/前編を読む)
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問答無用で手錠をかけられ警察に連行
伊藤管長の豪邸での大騒ぎ(編集部注:伊藤菅長氏の愛人になっていることを知った生島マリカ氏の父が、伊藤氏に私怨を持っていたクラブのママに焚きつけられて、伊藤氏宅へ出向き、激論を飛ばした。しかし、伊藤氏は、かつて娘を家から追い出した父を面責し、話し合いは物別れに終わった)からほどなくして、うちに大阪府警本部の刑事が毎日わたしを訪ねて来るようになりました。忘れもしない大阪府警本部井上班。来ると父の応接室へ通し、日替わりで色んなタイプの刑事から決まって同じ質問をされました。内容は伊藤管長とわたしとの男女関係でした。何百回と聞かれてもわたしは惚け通しました。認めたら、どれだけ伊藤管長に迷惑がかかるか。それくらいは14歳のわたしにでも容易く予想がつくことでしたので、父からは「早く伊藤とのことを認めて刑事に話せ」とせっつかれていました。しかし話す訳にはいかなかった。何故なら、住むところやお金をくれ助けてくれましたし、心配もしてくれた。それよりもなによりも、父と潤子ママに連れられて行った伊藤管長の豪邸での発言に恩義を感じていたからです。
それは3ヶ月を過ぎたころでしょうか。いつもと様子が違っていました。刑事たちは応接室に入るなり何も訊かず、
「立て。行くぞ」
と命令しました。
「え、ちょっと待って下さい。どこへ行くんですか。出かけるなら父に言って行かないと」
「お父さんは知ってはる」
「あの、何をですか」
建物内のインターフォンを押すが在宅のはずの継母から応対はない。問答無用で腕を取られ手錠をかけられました。
南署に到着すると、大阪府警本部井上班と大きく書かれた木札が掛けてある部屋へ入れられました。白髪に短髪の優しそうな井上班長は、わたしを警察署へ連行してきた権利を読み上げました。
何故こんな大事になっているのか。