ああ、これは大変なことになっている。伊藤管長も潤子ママも逮捕されて、とても大きく報道されていました。罪状は検察の予告通り伊藤管長が未成年淫行で、潤子ママは売春斡旋ということでした。潤子ママは伊藤管長への私怨から、わたしの父を使って復讐を果たそうとして、かえって藪蛇になってしまい、文字通り「死なば諸共」と相成りました。驚きのあまり、そのままテレビ画面に釘付けとなっておりましたら、なんとわたしの自宅上空をヘリコプターが飛んでいるではないですか。生放送で、今いる自分の家が映し出されているのです。目玉の奥に力が入るほど仰天しました。
「少女A」のその後
ワイドショーは連日にわたり法衣を着た伊藤管長の写真を付けて、「14歳の愛人を囲っていたロリコンエロ坊主」として面白おかしく扱い、週刊誌はロリータ宗教家、昭和のエロ坊主のタイトルで報じ、潤子ママにいたっては売春斡旋女衒婆とまで紹介されており、「少女A」についても想像を交えて書き立てました。
事件から約1年半後の1987年の4月3日付の朝日新聞朝刊によれば、「大阪国税局は2日、宗教法人を隠れみのに多数のソープランドを事実上経営していた「柿本寺」の元管長・伊藤義文(41)=売春防止法違反で起訴拘置中=に対し、重加算税を含め約22億円の所得税を追徴する更正処分を決定し、関係者に通知した。ソープランドであげた巨額の利益をそっくり伊藤個人の所得と認定したもので、個人の追徴としては異例の高額となった。同国税局などの調べによると、伊藤は大阪のミナミとキタで、最高17軒ものソープランドを経営。57年から60年までに、計85億円の売り上げがあったが、赤字申告や無申告を繰り返し、約25億円の所得をごまかした。ソープランドは「柿本寺」とは無関係の会社、個人名義になっており、伊藤とはつながりのない形をとっていたが、国税局は店長らの証言などから各店の売り上げの3分の1が伊藤に渡っていたことをつかみ、利益のすべてが伊藤個人の所得にあたるとして、所得税約17億円、重加算税約5億円を追徴した(略)」とありました。
週刊誌の突撃取材による近所の目や世間体を気にした父と継母は、自宅を叩き売ってマンションへと引っ越して行きました。わたしは父から毎月の仕送りをもらって心斎橋のマンションに一人暮らしを始めたのでした。こうなって初めて、ようやく得られた誰にも遠慮しなくていい自分の居場所ができたのでした。父や継母が最初からこうしておけば、近所に恥をさらすことも、家を売ることもなかった。わたしは1年も行き場がないホームレス生活をしなくてもよかったわけですし、借金だってしなくて済んだのです。そうしていたら、伊藤管長と潤子ママだって逮捕されずに済んだのかも知れません。
【前編を読む】「飛田か千日通りに送ったらどうや」借金300万円のストリートチルドレン少女(14)が目にした“ヤクザな世界”のリアル