鹿児島の農家を継ぐのは嫌だった
私の故郷は鹿児島県曽於郡松山町(現・志布志市)で農家の長男です。父は農耕馬の種付師。種付けをこっそり覗いては親父に怒られていました。小学校でのあだ名はもちろん種馬でした(笑)。
トラクターの普及で農耕馬が不要になってからは馬喰(ばくろう)(牛や馬の仲介商人)などやっていましたね。父は畑も少し持っており、中学生の頃から農作業を手伝っていました。
父は私が後を継ぐものだと思っていたでしょうが、農家だけは嫌だった。中学生の頃にテレビが家にやってきて、熱中して見ていた番組が『ロッテ 歌のアルバム』(TBS系)。司会者の玉置宏さんに憧れ、「1週間のご無沙汰でした。玉置宏でございます」と熱心に物真似をしていました。
そして「俺は司会者、芸能人になる」と夢だけぶらさげて上京します。27時間かかる東京行きの夜行列車に乗り込む際、父から餞別として1万円をもらいました。
上京後は産経新聞の販売所に住み込みで働きながら拓殖大学に通いました。新聞配達をしているうちにある方と偶然出会い、キャバレーでのボーイを始めました。当時はキャバレー全盛期で、生演奏をバックに淡谷のり子さんなどのスターが唄っていた時代です。出演者を紹介する専属の司会者もおり、「これがやりたい」と勉強し続けていると、前任の司会者が病気で休むというチャンスが巡ってきて、大学在籍中に司会者デビューを果たすことができました。
しかし、そこからが長かった。漫談家としてブレイクするまで「潜伏期間」は実に30年ほど続きました。でもね、今になって思いますが、無駄な経験は一つもなかったんですよ。
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「綾小路きみまろ誌上独演会『コロナと毒舌』」は「文藝春秋」2021年11月号と「文藝春秋 電子版」に掲載されています。
誌上独演会「コロナと毒舌」
【文藝春秋 目次】葛西敬之・老川祥一・冨山和彦・片山杜秀 危機のリーダーの条件/財務次官、モノ申す「このままでは国家財政は破綻する」
2021年11月号
2021年10月8日 発売
定価960円(税込)