「柏」にある“日本で初めて”のもの
と、そう思っていたら、実はそうした景色の原点が柏にあるというのだ。ペデストリアンデッキはいまや日本全国どこでも見かけるありふれたものだが、その日本でいちばん最初の例が柏駅。柏駅前の再開発によって、1973年に完成したものだ。
このペデストリアンデッキ元年の1973年は、柏駅にとっても開発元年といっていい年であった。ペデストリアンデッキを取り囲むビルにはそごうにマルイ、駅の西側には高島屋が相次いで開業した。そんなに百貨店ばかりあってもしょうがないじゃんかとも思うが、高度経済成長華やかなりし当時は百貨店こそ大正義だったのだろう。それに渋谷にだっていくつもの百貨店がありますしね。
その当時開業した百貨店のうち、西側(つまり東武野田線側)にできた高島屋はいまでは柏高島屋ステーションモールとなって、ブランドショップもいくつも入って拡張営業中。マルイは形こそ変わっているがいまも駅舎を出てすぐ右手にビルがある。が、そごうはもう存在していない。
そごうにあった「回転展望レストラン」
柏駅前のそごうのあったビルはペデストリアンデッキの北の端、駅舎を出て左に進んだ先にあった。地上14階、最上階には回転展望レストランも設けられていた。
回転展望レストランといったら、東京の人にはホテルニューオータニの17階がおなじみだろうか(あちらももう回転はしていない)。だが、実はそごうも回転展望レストランで有名で、柏のほかに大宮や豊田、小倉などにもあったという。なんとなく派手でダイナミックなバブリーな時代の産物ではあるが、少なくとも柏駅前にも街を見下ろす回転展望レストランがあった。
個人的には回転展望レストランで食事をしたことはないが、乗り物酔いするタイプの人は大変なんだろうなあ……。
ともあれ、そんな回転展望レストランを擁するそごう柏店も2016年をもって営業を終えている。専門店街となっていた駅舎正面のビル(スカイプラザ)にはビックカメラが入居したが、回転展望レストランのあった本館はいまもがらんどう。なんでも、三井不動産が跡地を取得しているとのことで、もしかしたらタワーマンションか何かに生まれ変わるのかもしれない。
と、駅前のペデストリアンデッキからここまで一気に話が進んでしまった。東京のベッドタウンとして人口が急増する柏の街の玄関口として駅前に日本初のペデストリアンデッキが生まれ、百貨店がいくつもやってきた。柏駅、花の時代の物語である。その時代を築いた当時の山澤諒太郎市長の像が、ペデストリアンデッキの下にひっそりと建っている。