今回やってきたのは、我孫子駅である。もう、読み方からして難しい。知らない人がいるかもしれないので念のためいっておくと、「あびこ」と読む。我の孫の子、ひ孫の街・我孫子である。といっても、皆目意味がわからない。地名というのはだいたいそんなものなのだ。
さて、どうして我孫子にやってきたかというと、終着駅だからだ。都心部で代々木上原から表参道・赤坂・霞ヶ関を通って下町に抜け、北綾瀬までを結んでいる東京メトロ千代田線。綾瀬駅からはJR常磐線各駅停車に直通しており、日中は多くの列車が我孫子ゆきなのである(ちなみに反対側は小田急線に直通、日中は向ヶ丘遊園ゆきが多い)。
なので、千代田線に乗っていると当たり前のように「この電車は我孫子ゆきです」などと案内される。車内放送では“あびこゆき”と言ってくれるからまあいいが、駅の電光掲示板では「我孫子」と当たり前のようにこの難読駅名が映し出されている。おなじ名の駅が大阪メトロ御堂筋線にもあるのだが、あちらは平仮名で「あびこ」と親切だ。千代田線の「我孫子ゆき」、読めない人はどうすればいいんですかね……。
まあ、そうはいっても我孫子ゆきの電車はあまりにたくさん走っているので、いまさら「読めない、どこなんだ!」と憤慨する人もいないだろう。一度読み方を知ってしまえば、難読駅名などどうってことはない。大阪の人たちに「十三」って難読ですよね、などと水を向けてもきっと話は盛り上がらない。
「我孫子」には何がある?
ともあれ、そんなわけで千代田線・常磐線各駅停車の終着駅のひとつである我孫子駅にやってきた。綾瀬駅からは約30分、都心の大手町駅からでは約50分かかる。松戸・柏よりも先だ。少し先で利根川を渡れば取手、すなわち茨城県。遠いのか近いのか、新宿から中央線で50分ならもう八王子である。
我孫子駅には何があるのか。いきなりだが、ソバがある。山下清も働いたことがある弥生軒(ご飯おかわりロボのやよい軒とは別ですよ)の立ちソバ店がホームにあって、唐揚げがどーんとのった唐揚げソバが名物だ。「我孫子のソバ、ウマいんだな」と言ってわざわざこのソバを食べるために我孫子に行く人もいるくらいだという。
なので我孫子といえばソバである。ただ、文春オンラインでは坂崎 仁紀氏がソバ巡りをしているので、いつか我孫子の唐揚げソバを深掘りしてくれることを期待して今回はそちらに譲ろう。坂崎さん、お願いします……。
苦渋の思いでソバ店に背を向けて、階段を登ってちょっと小さな改札を抜ける。改札の横にはおなじみの売店NewDaysがある……と思いきや、なぜかスシローのテイクアウト店。ソバを断念したから寿司でも食うかと思ったが、コロナと酷暑のこのご時世、寿司を我孫子の路上でむさぼるのはあまり歓迎されない振る舞いだろうと思ってこちらも断念した。結局、素直に我孫子駅の外に出たのである。