2年ぶりに開催された大学駅伝初戦の出雲駅伝。ダークホースと目されていた東京国際大が思わぬ圧勝を飾った。

2年ぶりの開催となった出雲駅伝のスタート ©文藝春秋

 アンカーに“史上最強の留学生”の呼び声が高いイェゴン・ヴィンセント(3年)を擁する東京国際大に対して、優勝を狙うライバル校は、最終区までにいかに大きな貯金を作るかが鍵となっていた。しかし、常にレースの主導権を握っていたのは東京国際大だった。

 1区の山谷昌也(3年)がトップと5秒差の区間3位と好スタートを切ると、3区の丹所健(3年)が混戦を抜け出し、独走状態に持ち込む。そして、アンカーのヴィンセントは、ビハインドを跳ね返すどころか、28秒もの貯金をもらって走り出すと、2位に1分57秒もの大差を付けてフィニッシュ。出雲駅伝で史上初の「初出場初優勝」を成し遂げた。

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 2位に青山学院大、3位に東洋大、4位に前々回優勝(前回大会はコロナ禍の影響で中止のためディフェンディングチャンピオン)の國學院大と続いた。

 レース前に優勝候補最有力と見られていた駒澤大は、三本柱の1人、鈴木芽吹(2年)の欠場が響き、序盤から優勝争いに絡めず。アンカーの田澤廉(3年)が8位から5位に押し上げてレースを終えるのが精いっぱいだった。

「初出場初優勝」を成し遂げた要因は…?

 今回の出雲で東京国際大の前評判は高く、優勝しても驚きはなかったかもしれない。

 だが、まさかここまで圧勝するとはおそらくは誰も思ってはいなかったのではないだろうか。それは指揮官とて同じだった。

出雲路で初出場・初優勝を果たした東国大の大志田監督 ©文藝春秋

「勝てるとしたら、(ヴィンセントで)逆転で勝つのだと思っていました」と大志田秀次監督もレースを振り返っていた。

「最後にヴィンセントがいますが、我々の目標は少しでもヴィンセントに負担をかけないこと。トップで進めなきゃいけないというよりも、トップとの差をできるだけ小さくして、上位集団でいければいいと選手たちには話していました」と大志田監督が言うように、“ヴィンセント頼み”から脱却を図ることはチームのテーマでもあった。そして、選手たちは見事にその通りのレースを見せた。

学生界では抜けた走力を持つ東国大のヴィンセント ©文藝春秋

 最大の殊勲は3区の丹所だろう。積極的な走りを見せ、区間2位の快走で混戦を抜け出し、チームに勢いをもたらした。

 今季の丹所は記録だけでなく、勝負強さも伴ってきた。丹所の大きな成長があって、出雲では“ヴィンセントに頼る”のではなく、“ヴィンセントを生かす”レース運びができたと言っていい。