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 また、1区を走った山谷の復活も大きかった。前回の箱根駅伝は直前のケガでエントリーメンバーからも外れたが、もともとは丹所と同等かそれ以上の力を示していた選手だ。今季の前半戦は不振だったが、9月に5000mで自己記録をマークするなど調子を上げ、今回の出雲の快走につなげた。

1区で好走した東国大の山谷。同区では青学大の近藤が区間賞を獲得 ©文藝春秋

 山谷が1区で好スタートを切り、丹所が先頭争いをキープ。そして、ヴィンセントが勝負を決めにいく――全日本や箱根駅伝でもそんな展開を描ければ、再び台風の目になるだろう。

 東京国際大は今回の出雲は3年生以下だけの布陣で臨んだが、続く全日本大学駅伝には、過去3度箱根を走っており、1年時に7区6位、2年時に8区5位と好走している芳賀宏太郎、夏合宿を引っ張っていた主将の三浦瞭太郎ら4年生も加わる。1区間の距離が長くなる全日本と箱根では最上級生の力は欠かせないだけに、東京国際大が再び頂点を極められるかは、4年生がキーマンになる。

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季節外れの暑さ、ライバル校の有力選手不在も追い風に

 出雲駅伝は、もちろん東京国際大の選手に力があったからこその優勝だが、外的要素がプラスに働いたのも事実だ。

 1つは10月にもかかわらず、気温が30度を超えたこと。シューズ等のギアの進化もあって年々高速化しているのにもかかわらず、今回は持ちタイム通りの力を発揮できない選手が多かった。実際に優勝タイムも、現行のコースになってからは最も遅かった。

出雲駅伝当日は30度を超える季節外れの暑さに ©文藝春秋

 駅伝は自然との戦いでもある。箱根でも強風が吹き荒れた年などに、持ちタイムが全く当てにならないほどレースが大荒れになる場合があるが、悪コンディションになるほど番狂わせが起きることを、改めて示したレースになった。

 ライバル校の足並みが揃わなかったことも一因だろう。順天堂大の現役オリンピアン・三浦龍司(2年)は、万全な状態ではなく、出走を回避。地元・島根での凱旋レースは叶わなかった。その他にも、駒澤大の鈴木、青学大の岸本大紀(3年)、早大の千明龍之佑(4年)、東洋大の宮下隼人(4年)、松山和希(2年)、帝京大の細谷翔馬(4年)といった有力選手が出雲路に不在だった。

 ダントツの優勝候補だった駒澤大でさえ、鈴木の欠場で後手に回らざるをえなくなったように、チームの主力選手の欠場はマイナス1よりもはるかに大きな痛手となることもある。その点で、“初出場初優勝”を目標に掲げて、出雲にきっちりと合わせていた東京国際大は、盤石の布陣を築いていた。

 また、今回の出雲は、全6区間の区間賞獲得者が全員異なる大学の選手だったが、1人の選手が好走を見せても、次の走者が足踏みするケースが多かった。“駅伝は流れが大事”などとよく言われるが、せっかく良い流れに乗ることができても、すぐに滞ってしまっては勝利を手にすることはできない。この点でも、東京国際大は、全員が区間5位以内と安定して力を発揮して見せたのが大きかった。