「私は遣り切りました。後悔はありません」
――ただ、2021年度長岡選手はVNLに同行しましたが五輪メンバーには残りませんでした。
中田 貴重な左利きだし得点力はあるので、2枚替え要因として必要な選手でした。若手選手に与える影響も大きく、練習中に長岡選手のプレーをじっと見つめる選手も多かったですからね。もちろん、試合中の存在感もあり、18年の世界選手権で怪我から復帰した長岡選手を、ドイツ戦の終盤で2枚替え要員として起用したところ、スパイクが決まった瞬間会場がどよめき、チームの空気も一瞬で変わった。そういう空気を換えることのできる選手は貴重です。
でも、五輪前のVNL開催期間中の練習時に、また膝を痛めてしまった。VNLは五輪の選考もかかっているので何とか調子を取り戻してほしいと願っていたし、長岡選手自身も毎日、試合や全体練習が終わってからリハビリを行い懸命に頑張っていましたが、最後まで調子は戻りませんでした。
五輪メンバー12名を選考するため選手一人一人と面談をした時、長岡選手の方から「私は遣り切りました。後悔はありません。ありがとうございました」と。その時のどこかほっとしたような複雑な表情を今でも忘れられません。
選手選考は「監督の仕事で一番辛い」
――五輪メンバー12人に絞るとき、相当悩まれましたか。
中田 代表監督の仕事で一番辛い瞬間ですね。まず、外す選手の所属チームに連絡をし、フォローをよろしくお願いしますと断りを入れてから選手一人一人と面談します。その選手には未来があり、今後も活躍してもらわなくてはならないので、問題や課題を伝え、逆に質問したりしながら、必ず次に繋がるように心配りしましたね。
私がVリーグの監督をしていた時代、やはり最終選考に漏れチームに戻ってきた選手の落ち込みようは大変なもので、実際引退した選手もいましたし、再びやる気を起こさせるには時間がかかりました。ですから、メンバー発表の時、ペーパーを読み上げ「以上」で終わるのではなく、外してもやる気を削ぐことなくさらに飛躍できるような言葉をかけたつもりです。