子どもの人生を奪う親
2008年1月3日、救急隊員がブリトニーの自宅に突入。抵抗する彼女を無理やり担架に縛り付けて救急車に乗せ、精神科病院に閉じ込めた。父ジェイミーが申請した「5150保護」が発動したのだ。これは「精神的障害によって他者または自身を危険にさらす人物は強制的に72時間保護される」という法律。その月末にも再び「5150保護」で彼女は病院に拘禁された。
この間に父ジェイミーは密かにブリトニーの「成年後見人」になる申請をしていた。この制度は本来、認知症になった老人の財産管理のために適用されるものだ。彼が心配だったのは娘の健康よりも金だろう。当時「あの子がこのまま浪費を続けたら、4年で破産するだろう」と語っている。だが、ジェイミー自身が過去に破産しているし、2002年にはアルコール依存症で入院し、ブリトニーの母と離婚している。後見人としてどうだろう。
沈黙を破った理由
ところがブリトニーは父が出した条件を呑んだ。後見人がつくことで息子たちに会うことを許されるからだ。苦渋の決断だった。その後、彼女は12年間、アルバムを出し、ツアーをして黙々と働いた。ラスヴェガスで1年間連続公演をしたギャラは毎週1億円。すべて父親に取られた。
ブリトニーが今回、沈黙を破ったのは、結婚したいからだ。法廷で彼女は「恋人のサム・アスガリ(27歳)の子どもを生みたいんです」と訴えた。「でも父は私にIUD(子宮内避妊具)を装着させ、父の許可なしには外せないんです」
「ブリトニーに共感します」ドリュー・バリモア(46歳)はラジオで支援を表明した。彼女も7歳で子役として『E.T.』(82年)で大スターになり、母親にさんざん搾取されて、自殺をはかり、1年半も精神科病院に閉じ込められ、14歳で裁判をして母親の親権からの解放を勝ち取った。
ブリトニーの人生を奪ったのは父親だけじゃない。彼女のスキャンダルを面白がってネタにした人々すべての罪だ。筆者も含めて。