2020年、第45代大統領であったドナルド・トランプは大統領選に落選し、2021年1月にジョー・バイデンが大統領となりました。希望の再スタートかと思いきや、選挙から半年が経った5月24日にロイターが発表した世論調査によると、アメリカ人の25%が大統領選挙には不正があったと信じています。
そんな大混乱の中にあるアメリカを、現地に住む町山智浩氏がレポートし、まとめたのが、『アメリカ人の4人に1人はトランプが大統領だと信じている』(文藝春秋)です。同書より一部抜粋して、アメリカの今を紹介します。(全2回の2回目/前編を読む)
◆◆◆
2020年だけで60億円稼いだといわれるスーパースター
「Free Britney(ブリトニーを自由に)!」
このスローガンがアメリカ中を飛び交っている。ポップ歌手ブリトニー・スピアーズ(39歳)を成年後見人制度から解放してあげよう、という運動。彼女は2008年から12年間にわたって父親ジェイミーが後見人となり、彼女の財産(銀行口座、クレジットカード、仕事の契約)を管理するだけでなく、連絡や移動、交際など生活のすべてを監視していた。
だが去年、ブリトニーは父親が後見人を務めることからの解放を求めて裁判を起こした。6月に法廷に立った彼女は「私はまるで売春婦です」「私にも自分の人生を生きる権利があります」と訴えた。
2020年だけで60億円稼いだといわれるスーパースターがなぜ、自分で買い物ひとつできない事態になってしまったのか?
全米で少女たちがブリトニーのマネをしてへそ出し
ブリトニーは1981年に生まれ、ルイジアナ州ケントウッドという平均世帯年収2万4千ドル、貧困率37.6%の田舎町で育った。父ジェイミーは溶接工に始まり、製油所の労働者、工務店、調理人など職を転々とし、リラクサロンを開いて失敗し、破産した。だが、娘ブリトニーは天才だった。幼い頃から教会で賛美歌を歌い、10歳でテレビに出演。14歳でディズニーの子ども向けバラエティ番組『ミッキーマウス・クラブ』のレギュラーになり、1998年、16歳でCDデビューした。