親世代のいじめの構図が、そのまま子世代に
そんな態度が“生意気”に見えたのか、ことあるごとに「あなたはなっていない、態度が生活に表れている」といった個人攻撃が始まった。
「サークルはすぐにやめたのですが、以来、近所の人に『こないだ男性の運転するバイクの後ろに乗ってたんですってね』みたいなことを言われるようになって、まったく身に覚えのないことだったので怖くなってしまいました。そもそもシングルマザーってだけで気に入らないようで、私生活に関する根も葉もないウワサを流されました」(恵子さん)
娘のまみさんをいじめていた加害者のリーダーYは、剣道サークルで恵子さんを攻撃した男性の娘だ。親世代のいじめの構図が、そのまま子世代にトレースされていたのだ。
南相馬市から引っ越してきたという事実も、攻撃の理由だった。「避難のための助成金をたっぷりもらってるんだろう」……そんな心無い流言が、そこかしこから聞こえてきた。
「うちの場合は自主避難なので、引っ越しに関する補助金は一切出ていません。こちらも説明するんだけど、まったく取り合ってくれない。とにかく周囲に味方がいないので、言われるばかりで、反論できない。地域と私たち家族の間には、目に見えない壁がずっと存在していました」(恵子さん)
いじめ探偵の阿部氏も、次のように語る。
「大人の序列がそのままスクールカーストに持ち込まれることはよくあります。剣道サークルの男性はM町で古くから商売をしている人。さらにその妻は幼児教育関連の公務員で、近所から『先生』と呼ばれる存在。その子どもが親と同じような態度に出るのは必然とも言えるのです」
進学した高校でいじめ加害者と再び
娘は学校でいじめられて、母親は地域で排除の圧力と闘った。
「娘は中学2年の1年間を病院付属の学校で過ごし、その後はM町から別の町に引っ越してそちらの中学校に通いました。現在は県立の高等学校に通っています」(恵子さん)
当初想定していた生活とはかけ離れたものになったとはいえ、少しずつ元の日常を取り戻しつつあったのだが――。
「じつはまだ終わっていないんです……」(恵子さん)
なんとまみさんの通う高校に、いじめ加害者のひとりが在籍していたのだ。
同校は一般受験と推薦で入学試験の日程や形態が大きく違う。おかげで同学年であっても、誰が受験したのか分かりにくい。まみさんは一般受験で入学したが、いじめの加害者は推薦枠で入学していたのだ。
「今でも廊下ですれ違うときに、まみを睨みつけてきたりするらしいのです」(恵子さん)