そのたびにまみさんは、過呼吸や心拍数の上昇といったトラウマ反応が出てしまうという。
忘れたくても忘れることができない苦い記憶
今年の8月20日、夏休みの最中に第三者委員会が敢えて中間報告をしたことは前述の通りだ。その裏には、高校に進学しても続くいじめの抑止力になれば、との思いがあった。つまり、第三者委員会も未だに続くいじめの実態を認識しているということである。
渦中にあるまみさんが、今の心情を次のような手紙で伝えてくれた。
〈加害者にされたこと、言われたことは、忘れたくても忘れることができません。呪いのように染みつき、私だけでなく、家族まで今もなお苦しめられています。
しかし、私のことを理解し、支えてくれた家族、その他の大人がいてくれたおかげで、少し立ち直ることができました。深く感謝しています。
これから子供を支えてくれる大人が1人でも増えることを願っています〉
大人は“大人の役目”を果たせているのか
阿部氏は今回の事件に関わって感じたことを、次のように語る。
「第三者委員会も認めたように、まみさんへのいじめの事実は明白です。そのために苦しんでいる人間がいることを、加害者はきちんと受け止めるべきです。そして、きちんと謝る。親もそのように教育すべきでしょう。このチャンスを逃せば、加害者はその罪に気づくことができずに一生を過ごすことになってしまう。これは、とても不幸なことです」
いじめが認定されたにもかかわらず、現在も被害が続くことを重くみた高校側は、いじめの加害者に対して「まみさんの教室に近づかないこと」といった口頭注意を行った。しかし、校内で完全に顔を合わせない生活は不可能だ。
「まみさんの手紙にある通り、子供を支えるのは“大人の役目”です。その役目を本当に果たせているのか、周囲にいる大人たちは、自分の胸に手を当てて考えてみてほしい。いじめで深く傷つけられたまみさんがこれ以上、苦しまないようにしてあげてください」(阿部さん)
まみさんが本当に安心して登校できる日が、一日も早く来ることを願わずにはいられない。
【悩みを抱えた時の相談窓口】
「日本いのちの電話」
▽ナビダイヤル「0570-783-556」午前10時~午後10時
▽フリーダイヤル「0120-783-556」毎日:午後4時~午後9時、毎月10日:午前8時~翌日午前8時