金満家、やり手の事業主、お金持ちの子息……。タワマン住人という言葉を聞いて、そんなステレオタイプ的な住人像を思い浮かべる人は多いだろう。しかし、日本社会を独自の視点で研究する三浦展氏の分析によると、「タワマン住人」たちのまた違った素顔が見えてきた。

 ここでは同氏の著書『大下流国家~「オワコン日本」の現在地~』(光文社新書)の一部を抜粋。調査データをもとにした分析から、タワマン住人たちの意外な特徴・傾向について紹介する。(全2回中の1回目/後半を読む)

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「タワマン住人」は全国の3.4%

 タワーマンションというものは、なぜだかそれが好きな人と嫌いな人が極端に分かれている。

 好きな人は、見晴らしが良い、都心の夜景を楽しめると言い、その実ステイタスを味わい、虚栄を満たすのだろう。高級外車を買う気分と似ている。

 嫌いな人は、高所恐怖症なのかもしれないが、それより何より、タワマン住人が街を見下ろして偉そうな気分になっているということに腹が立つ。というか、根本的な価値観の違いを感じるのだ。だから、大災害が起きてタワマンの電気が止まって50階まで階段で上るなんて話を聞くと、正直胸がすっとする。

※写真はイメージ ©iStock.com

 タワマンが嫌いな人だってきれいな夜景は嫌いじゃないと思うが、そういう風景に対する好みの強弱はやはりある。おそらく夜景を毎日見たい人は、キラキラ輝くダイヤモンドにうっとりする人である。だがダイヤを見ても、ああ、まぶしく光ってるねとしか思わない人はいる。きれいだと思って、ぜひともダイヤを手に入れたいと思う人と、そう思わない人がいる。そういう差がタワマンにもあると思う。

 今回の「日本人の意識と価値観調査」(編集部注:下流社会15年後研究会が2020年11月に行った調査。日本在住の25~54歳男女2523人を対象にしており、三菱総合研究所「生活者市場予測システム」の2020年6月調査のサンプルに追加質問を行った)では都心などのタワマンに住んでいるか、郊外の戸建てに住みたいか、自然の豊かな地方の中古住宅を安く買って住みたいかなどを聞いている。その回答と年収などをクロス集計すると何がわかるだろうか。

 質問は「あなたのこの15年間の住まい方やこれからの住まい方について、以下からあてはまるものを選んで下さい」(複数回答)というもので、そのうち「大都市や県庁所在地の都心部のタワーマンションに住んだことがある(住んでいる)」人(以下「タワマン住人」とする)は全国の調査対象2523人中86人で3.4%だった(うち28人が東京23区)。