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《日本各地の理想と現実》都市→地方、地方→都市…「移住を希望する」両者へのアンケートで明らかになった“生活に対する不満”のリアル

『大下流国家』より #2

2021/11/04
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 テレワークの普及をはじめとしたさまざまな要因によって、身近になった「都市部」から「地方」への移住。一方、当然のことながら、「地方」から「都市部」への移住を検討する人もいる。都市部から地方へ、地方から都市部へ……。それぞれの移住希望者は、現状の生活にどのような不満を抱え、移住先の生活にどのような希望を見出しているのだろうか。

 ここでは、日本社会を独自の視点で研究する三浦展氏の著書『大下流国家~「オワコン日本」の現在地~』(光文社新書)の一部を抜粋。移住希望者とそうでない人の違い、都市部在住者と地方在住者の「移住に対する目的意識」の違いから、現代日本人の価値観を垣間見る。(全2回中の2回目/前半を読む)

※写真はイメージ ©iStock.com

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「定住型男性」と「移住型女性」の価値観の差が大きい

「現代日本人の意識と価値観調査」(編集部注:下流社会15年後研究会が2020年11月に行った調査。日本在住の25~54歳男女2523人を対象にしており、三菱総合研究所「生活者市場予測システム」の2020年6月調査のサンプルに追加質問を行った)によると、今後移住を考えている人と考えていない人の「日本認識」の差は少なくない。

 男女の差はもっと大きいので、移住を考えている女性と考えていない男性の差が顕著である(年齢による差はあまりない)。

 移住を考えている女性が考えていない男性より10ポイント以上多い意識としては、以下のようなものがある。

・結婚しなくても幸せに生きられる社会にするべきだ
・LGBT(同性愛など)の差別をなくすべきだ
・夫婦別姓でもよいようにするべきだ
・女性がもっと有利な条件・高い年収で働けるような社会にするべきだ
・男性の家事や育児の時間が短い
・有給休暇やリモートワークなどによって時間と空間を自由に使う暮らしがしたい
・児童虐待への対策が遅れている
・まわりの目や声が気になる生きづらい世の中になった
・女性が政治や経営のトップに少ない
・同性婚が認められていないのは問題だ
・サラリーマン以外の働き方をしても安心して生きられるようにすべきだ
・セクハラ、パワハラが多い
・見合い結婚もいいと思う

 明らかに結婚、性別、家事・育児、働き方に関する項目が多い。結婚をしてもしなくてもいいし、同性同士が結婚してもいいし、夫婦別姓でもいいし、逆に見合い結婚もいいかもしれない、というように、結婚に対して多様な価値観を求めていることがわかる。

 またリモートワークなどで時間と空間を自由に使いたいし、まわりの目や声を気にしないで生きたいし、サラリーマン以外の働き方もしたい。もちろん女性の働く条件はもっと向上するべきだし、女性が政治や経営のトップに立つことも増えるべきであり、セクハラ・パワハラはもちろん問題外だと思っている。

 ひとことで言うと、人間の、特に女性の多様な生き方に関する認識について、「定住型男性」と「移住型女性」の差が大きいわけである。