いま、自動車産業では100年に一度の大きなパラダイムシフトが進んでいる。それを目の当たりにすることができたのが「東京モーターショー2017」だ。そこで展示された各社のコンセプト・カーは、クルマの将来像と、それぞれの方針を形にしたものだ。これからクルマはどのような機能を備えるようになるのだろうか。
そこで、自動車産業を席巻しているパラダイムシフトと、日本の自動車会社の現状を書いた『自動車会社が消える日』の著者、井上久男氏に、2030年、私たちはどのようなクルマに乗っているのか、その未来像をインタビュー。
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クルマを買おうとすればEVが最初のチョイスになるかもしれない
モーターショーの展示が示しているように、これからのクルマは一部地域ではEV(電気自動車)が主流になっていくでしょう。ですから2030年に、クルマを買おうとすればEVが最初のチョイスになる場合がある。このときガソリンエンジン車やディーゼル車、そしてハイブリッド車が選択肢に残っているのか。それは技術開発の進み具合や各国の環境規制に左右されるので明言できませんが、EVが最も有力な選択肢になることは明らかです。
そのEVも2種類に分かれると思います。ひとつは街中で気軽に乗るようなタイプ。1~2人乗りで、取り回しのしやすい小型のEV。
このトヨタの「Concept-愛i RIDE」は2人乗りで、航続距離は100~150km程度。普段、乗るのであれば何の問題もない距離ですし、コンパクトな車体は扱いやすいでしょう。車椅子でも乗りやすいようにドアが大きく開くし、ステアリングやアクセル、ブレーキペダルはなく、手元のジョイスティックで操作するユニバーサル仕様です。
こうした乗りやすさを追求したタイプと、従来のガソリン車と同じ程度の性能や、乗り心地のよさを追求したタイプ、この2つに分かれるでしょう。
ハイブリッド車がエコカーと認定されなくなる?
この日産IMxは「意のままに操る喜びと、今までになかった移動の楽しさを提供」とうたっています。
動力源となる電池の性能も今後、向上していくでしょうから、2030年にはEVが完全に市民権を得ているはずです。
トヨタは東京モーターショーで、次世代電池「全固体電池」の、2020年代前半の実用化を目指す方針を明らかにしました。これは現在、EVに使われているリチウムイオン電池の倍以上の容量があり、充電時間も大幅に短縮できる上に、航続距離も飛躍的に伸びるといいます。
また、EVの普及を後押ししているのは技術的な問題だけではありません。もっと大きな要素が各国の環境規制です。世界最大の自動車市場であり、自動車生産国である中国は、EVシフトを明確に打ち出していますし、これはアメリカ、イギリス、フランスも同じです。そこには各国の思惑があるのですが、問題なのは日本の自動車会社が得意としてきたハイブリッド車が、エコカーと認定されなくなるということです。
日本ではエコカーといえばハイブリッドですが、ガラパゴス化する危険性が高まっているのが実情です。