そう思っていると社長は慌ただしく電話を取り出し、今度は洗面所の配管の件で「社長さん」なる人物に連絡をしはじめた。「社長さん、早く! ●●マンションの! 昨日から入居の吉川さんとこ! 水漏れしてるから早くきて! いい? 早くね!」と早口でまくしたてていたかと思えば、今度は賃貸契約の際に私が加入した保険会社に電話をかけ、「あっ●●くん? 吉川さんとこの件だけど、契約の手続き早く進めてちょうだい! 洗面所の配管から水漏れしてるから! すぐ必要なの! ね! お願いね!」と担当者に圧をかけている。
「え、じゃあお客さん悪くないじゃないですか」
漏れ聞こえる電話相手の声の様子から察するに、普段からこの管理会社に相当無茶ぶりをされていて、おそらく社長のことを嫌いなのだろうという感じがすごく伝わってきた。「え? 水漏れ? お客さんいつから入居でしたっけ?」という保険会社の担当者の質問に、社長が「だから、昨日! 入居者がようやく決まったのにこれじゃ生活できないの! あとで修理の書類送るから!」と苛立ちを露わにする。
しかし、保険会社の担当者はいたってまともな人であったようで「え、じゃあお客さん悪くないじゃないですか。全部そっちが悪いじゃないすか」と正論パンチをくりだすも、社長は「だからね! 今ここで押し問答してる場合じゃないの! 入居者がやっと決まったのに! とにかく急いで! わかった!?」と電話をガチャ切りしてしまった。
そうこうしているうちに配管を修理するために「社長さん」こと70歳くらいの作業着姿の男性が現れ、無言で洗面所へ向かう。わりと蒸し暑い日だったのは仕方がないとして、裸足だったのがものすごく気になってしまった。パッキンのところが破損している、と言いながら、うちのバスタオルを無断で使ってゴシゴシ汚れを取っているのも、すごく気になる。あとでアルコールで床を拭こう、そしてあのバスタオルはもう雑巾にしよう。そう考えていると、トイレの方から「すみませ~ん、お掃除終わりましたので確認お願いします」と娘さんの声が聞こえる。
汚物が消えた!!(歓喜)
汚物が消え、張り付いたトイレットペーパーも消えている! これは素直に嬉しかった。漂白までしてくれたそうで、当面は安心してトイレを使えそうだ。