文春オンライン

「貸す? こんな状態で、家、普通…」引越し先の汚トイレをめぐって管理会社とバトルした話

同族企業がすべて悪いというわけではないのだけれど…

2021/11/08
note

 掃除した箇所、落とせない汚れなどの説明を受けているとき、トイレの床を小さな蜘蛛がササッと横切った。「あ、気にしないので、その蜘蛛は殺さないであげてください」と娘さんにお願いすると、娘さんは笑顔で「わかりました! 蜘蛛は殺すと縁起が悪いっていいますもんね」と快く応じてくれた。そして「じゃあ仕上げにサッと拭いておきます」と笑顔のまま言った娘さんは、たった今「殺さない」と約束したはずの蜘蛛を巻き込んで、隅々まで床を綺麗に磨き上げた(蜘蛛くん!!)。

 床に残された蜘蛛の死骸を見て「(虫は)人間と共生してるんですね~」と言いながらニコニコしている娘さんのことが、怖くなってしまった。実は目がすごく悪くて、気付かないうちに巻き込んでしまい、死んでいることにも気付いていないとかだと信じたい。

 トイレに続いて洗面所の配管も直ったというので確認にいくと、もう水漏れはしなくなっていた。社長が席を外している間だけは「社長さん」が気さくに話をしてくれるので、おそらくあの女性が苦手なのだろうな、と思った。「社長さん」は昔からあの管理会社と繋がりがあるようで、「自分たちは水回りの修理などを担当しているので、今度から直接呼んでください」と名刺をもらった。社長経由ではなく、直接呼ぶことを強く希望していた。

ADVERTISEMENT

そういうところあるよね

 管理会社の社長は戻ってくるなり「いやー綺麗になったでしょ! どうですか、吉川さん! ピカピカでしょ!」と一人で盛り上がっていたが、トイレと風呂と洗面所の換気扇の中に埃がびっしりと付いているのを発見して指摘したところ、「1週間以内にハシゴ持って掃除の者を寄越しますので!」と言って帰ったきり、連絡はパタリとなくなってしまった。私も色々と疲れてしまい、まだ自分から連絡をできずにいる。

 引越して2週間が経った今思うのは、私は同族企業の性質が心底苦手だということだ。昔、新卒で働いていた同族企業はブラック企業で、法律の「ほ」の字もない無法地帯。有給を取れば、なぜか給料から5000円を天引きされるような会社だった。「この会社はどうして残業代が出ないのですか」と会長に直接聞いた勇敢な社員は、みんなが見守る中、会長から「今までの分だよ!!!」と1万円札を1枚顔に叩きつけられて辞めて行ってしまった。私はというと、社長の息子から愛人契約を持ちかけられたのを断ったことがきっかけで嫌がらせが激化、退職を余儀なくされた。

 同族企業がすべて悪いというわけではないのだけれど、今回の引越しでまた、同族企業の「風通しの悪い社風」を身をもって味わうことになってしまった。

「貸す? こんな状態で、家、普通…」引越し先の汚トイレをめぐって管理会社とバトルした話

X(旧Twitter)をフォローして最新記事をいち早く読もう

文春オンラインをフォロー