2021年の衆議院選挙で激戦区の1つと言われていたのが「香川1区」。スポーツ紙でも派手に扱われていた。

《香川1区(高松市など)のバトルが激化している。自民前職、平井卓也前デジタル担当相(63)と、映画『なぜ君は総理大臣になれないのか(なぜ君)』に登場する立憲民主党前職、小川淳也氏(50)の一騎打ちに、日本維新の会の新人、元参議院議員秘書の町川順子氏(62)が参戦し、大混戦になっている。》(日刊スポーツ10月26日)

さながら夏祭りの風情があった小川淳也氏の最終演説 ©️プチ鹿島

映画を見てないのに…酷評?

 平井氏は映画『なぜ君』について次のように演説したという。

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《「ドキュメンタリーと言っているが、明らかに本人(小川氏)に脚光を浴びせ、私をおとしめるためにつくっていることは間違いない」と語気を荒らげ、「有名になりたい、当選したいだけが目的だとしか思えない」とバッサリ切り捨てた。》

 あの映画は「私をおとしめるためにつくっている」と断言!

 同じ日の「スポーツ報知」にも発言が載っていた。

「相手を好きになって私を嫌いになるらしいですね。新しい選挙運動で、通用したら全国会議員が映画を作ることになる。私は仕事で認められたい!」

 注目は発言の冒頭部分。

「私は見てないですけど」

 見てないんかい。

 なぜ君は映画を見てないのに酷評できるのか。不思議だ。

映画では“風変わりな人”に見えた小川淳也氏

 おさらいすると、あの映画は大島新監督が妻から「高校で一緒だった小川くんが、家族の猛反対を押し切って出馬するらしい」と聞いたのがきっかけ。2003年からカメラを回していた。地盤もお金も知名度もないのに選挙に出るという候補者。私はフジテレビの「ザ・ノンフィクション」に出てくるような“風変わりな人”を見る気分だった。

 2017年の「希望の党」騒動は映画のハイライトだ。小川の葛藤、矛盾、もがきがこれでもかと描かれていた。支持者からは罵倒されている。理想を追っていてもやっぱり政局に巻き込まれている。かなりカッコ悪い。統計不正問題(2019年)を国会で追及してブレイクした姿はラストのほうでわずかだけ。

 この“風変わりな人”を描いたドキュメンタリーはヒットした。「風変わりなのはむしろ永田町のほうなのでは?」という視点も生まれたと思う。そして今秋、大島監督は続編の『香川1区』を制作中であると発表。今回の選挙がテーマになるのだ。盛り上がってまいりました。一体何が現地で起きているのか。