東京の郊外には、いくつものベッドタウンと呼ばれる町がある。

 工業や農業など固有の産業が発達している地方都市とは違い、東京方面に通勤する人たちが暮らす文字通りのベッドタウン。もちろんそれぞれの町に個性はあるのだが、戦後の人口増加と鉄道ネットワークの拡充などにより、ベッドタウンは雨後の筍のごとくあちらこちらに生まれていった。首都圏の周縁は、ほとんどこうしたベッドタウンから構成されているといっていい。

 そうした首都圏における無数のベッドタウンの中で、いちばん有名な町のひとつが春日部ではないかと思う。なんで有名なのかって、そりゃあもう、あの国民的アニメ『クレヨンしんちゃん』のおかげに決まっている。“クレしん”の舞台であることは広く知られていて、そのおかげで知名度は爆上がり。春日部と聞いたら誰もがクレしんを思い浮かべるのではなかろうか。

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東武線“ナゾの『クレヨンしんちゃん』の駅”「春日部」には何がある?

 春日部駅の発車メロディはクレしん主題歌の『オラはにんきもの』だし、駅名標にしんちゃんとシロがあしらわれていたり、駅の外に出てみたってクレしんがあちらこちらに。まあとにかく、ベッドタウン・春日部は『クレヨンしんちゃん』の町としてとみに有名なのである。

 ところが、である。春日部がどこにあるのか、クレしん以外に何があるのか、あんがい知られていないのではないか。かくいう筆者とて同じで、東武スカイツリーラインに乗っていると春日部って駅があるなあ……くらいなものだった。知名度は高くとも訪れる機会のない町、春日部。だったら行ってみるのが、仕事である。

「春日部」には何がある?

今回の路線図。「春日部」は東武スカイツリーラインとアーバンパークラインの交わるところにある

 最初に改めて春日部駅の場所を路線図でも見ていただいて確認してほしい。大宮の北東、越谷の北、東武動物公園の南。東武スカイツリーラインとアーバンパークライン(野田線ですね)の交わる場所に春日部駅がある。

 スカイツリーラインには春日部駅を終着とする列車はないが、ひとつ北の北春日部駅の近くには車庫があるので、いくつかは北春日部終着の電車も走っている。

 スカイツリーラインの急行に乗れば、北千住まで約30分。そこから地下鉄に入って都心のどこかに通勤すると考えても、長くて1時間といったところだろう。となれば、首都圏では遠すぎるほどではなく、標準的な通勤時間といっていい。通勤時間で見る限りは、所沢や立川あたりとほとんど同じような位置づけだと思っておけばよさそうだ。

 つまり、クレしんで名前を聞く限りではなんだか遠そうなイメージを持つかもしれないが、春日部はあんがい都心に近い、ということである。