明るくユーモラスにがんと闘病した人も
苦悩や葛藤が文面に滲み出る竹原さんやつんく♂さんの闘病記に対し、全体的に明るくユーモラスな調子でがんとの闘病を描いているのが、黒沢年雄さんの『二流の芸能人が、何度がんになっても笑って生きている理由』(講談社)です。東宝のニューフェイス出身で、俳優や歌手としてだけでなく、近年はバラエティ番組でも活躍する黒沢さんですが、48歳で大腸がんの手術を受け、16年後には膀胱がんにも見舞われました。
1度目に告知された直後はさすがに死を考えて、一人部屋の中で号泣したそうです。しかし、もともと明るくて前向きな性格の黒沢さんは、「いや、こうなったらしょうがない。とことんがんを楽しんでやろう」と思うことに決めて、手術を乗り越えました。それもあって、2回目のときは「あ、そうですか。ちょっとヤベぇな」と思うくらいで、ほとんど動じなかったそうです。
なぜ、黒沢さんは笑っていられるのか。それは、高校1年生のときに母親を喉頭がんで亡くした生い立ちや、歌やドラマがヒットしたと思ったら、仕事が激減して借金を抱えるなどした、山あり谷ありの人生にヒントがありそうです。本書は戦後映画の黄金期を支えたスターたちとのエピソードが盛りだくさんで、闘病記というより半生記といったほうがいいかもしれませんが、自分の人生と重ねながら読むと、より感慨深いのではないでしょうか。
闘病記を残す人の中には、病を淡々と受け入れる人もいれば、壮絶に闘って力尽きる人もいます。いずれにせよ人間である限り、生老病死の宿命は免れません。「自分ならどう病と向き合うか」を考えるためにも、先達の生き様に学ぶことは意義があると思います。