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 アドマイヤムーンとのコンビでは秋にもジャパンCを制し、年度代表馬にも選出されるほどの活躍を見せた岩田康騎手は、翌年にはGⅠを4勝とさらなる飛躍を遂げた。単勝11番人気のブラックエンブレムで秋華賞を制するなど、前評判の低い伏兵も勝利に導く勝負強さは圧巻の一言。思い切ってインを突く大胆な戦法はその代名詞となり、GⅠタイトルを次々と射止めていった。その後はジェンティルドンナやロードカナロアら歴史的な名馬ともコンビを結成。2000年代後半から2010年代にかけての競馬界をリードするジョッキーの一人へとのし上がっていった。

「アンライバルドで第69回皐月賞を制した際の岩田康誠騎手 ©文藝春秋」

節目を迎えた「武豊時代」

 一方で武豊騎手も、宝塚記念の敗戦後は新たにメイショウサムソンの鞍上に任命され、天皇賞・秋を制覇。翌年はウオッカとも新たにコンビを組み、天皇賞・秋でダイワスカーレットと死闘を演じた末に勝利を収め、全国リーディングの座も死守。迫りくる新たな強敵を相手に一歩も譲らないその姿からは、中央競馬の第一人者としての意地を感じさせた。

 それでも、ついに「その時」は訪れた。09年、武豊騎手が全国リーディングから陥落。その牙城を崩したのは、岩田康騎手と同じく地方競馬から移籍してきた内田博幸騎手だった。さらにその翌年は落馬負傷による長期休養もあってリーディング争いからも脱落。永遠に続くのではとさえ思われた「武豊時代」は、こうしてひとつの節目を迎えたのである。

「第69回皐月賞で武豊騎手が騎乗したリーチザクラウンは18頭中13着だった ©文藝春秋」

 長く競馬を見ているうちに、時代のターニングポイントには何度も遭遇してきた。それらには全く予期せず訪れるものと前兆を感じさせるものがあったが、07年の宝塚記念は吹き荒れる嵐の前ぶれのようなざわめきがあったことを覚えている。何しろ「あの武豊が降ろされた馬が勝ったGⅠレース」だったのだから。この衝撃の強さは可能な限り克明に、後世に語り継いでいきたいと思う。

文=橋本祐介

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