近年、「早期退職を募集する企業」が増えています。昨年は上場企業93社が早期退職を募集し、募集人数は判明している80社で1万8635人に達しました(東京商工リサーチ)。
今年は10月末までに72社が実施し、年間で100社を超える見通しです。経営不振の企業はもちろん、“黒字リストラ”と言われるように業績好調の企業も募集するようになっています。
早期退職募集の際には、よく「退職勧奨」が行われます。退職勧奨とは、社員が自発的に退職の意思表示(辞職)をしてくれるように、会社から社員に対して働きかけることです。早期退職募集のような特別な時だけでなく、平時から成績不良社員に退職勧奨を行っている企業もあります。
退職勧奨といえば、ドラマや映画では、他の社員から隔離された環境に追いやり、草むしりのような単純作業に従事させる“追い出し部屋”がお馴染みのシーン。では、実際の退職勧奨はどのように行われているのでしょうか。
今回、大手・中堅企業31社の経営者と人事部門関係者に「退職勧奨の実態」をアンケートとヒアリングで調査しました。
「退職勧奨を実施している企業」は4割
まず「退職勧奨を実施していますか?」と質問しました。
平時から実施している:9社
臨時で実施した:4社
実施していない:18社
※日本では、懲戒解雇に相当する社員に対し、本人のキャリアを傷つけないように退職勧奨を行うことがあり、今回の調査では「実施していない」に分類
業種別では、製造業では「実施していない」という回答が多く、流通業・サービス業・金融業では「平時から実施している」「臨時で実施した」という回答が多数ありました。外資系2社はいずれも「平時から実施している」でした。この違いは、労働組合の力が強いか弱いかによるものと推察されます。
なお、「人事部の制度としては実施していませんが、成績不良社員に対し職場の管理職が働きかけをしています」(物流・人事部長)という回答がありました(「実施していない」に分類)。制度としては実施していないものの、現場レベルで実施しているという企業はたくさんありそうです。
「実施していない」と回答した企業は、理由を以下のように説明しています。
「当社は家族主義の経営理念を大切にしており、社員を退職に誘導しようという発想はありません」(機械・社長)
「近年、組織のスリム化を進めた一方、事業が好調で、深刻な人手不足。退職勧奨どころか、もっと人を増やしたいという状況です」(素材・人事部門マネジャー)
「経営陣の一部から実施すべきだという意見もありますが、(労働)組合がうるさいですし、訴訟リスクやレピュテーション・リスクもあり、なかなか踏み切れていません」(建設・人事部長)