「追い出し部屋が存在する」と答えた会社は1社だけ
次に、「平時から実施している」「臨時で実施した」という13社に実施方法を訊ねました。13社すべてが「業務成績などの基準を設定して、該当する社員に対し、職場の管理職や人事部門が面談で働きかけている(働きかけた)」と答えました。
今回、「追い出し部屋が存在する」と回答したのは1社だけでした。実は存在するのに公表していないだけかもしれませんが、次のコメントの通り、追い出し部屋は流行らなくなっているようです。
「当社でも昔は追い出し部屋があり、ずいぶん荒っぽいことをやっていました。でも最近はコンプライアンスがうるさいので、ご法度です。1回面談してダメだったら諦めるように、現場の管理職には指導しています」(IT・専務)
「退職勧奨をホワイトにやるよう努めています。よく現場の管理職が人事の点数稼ぎのために、勝手に部下に退職勧奨をするケースがあります。訴訟リスクを考えると非常に危なっかしいので、そういうスタンドプレーをしないように管理職には注意を促しています」(金融・人事部長)
退職勧奨それ自体は、違法ではありません。ただ、繰り返し面談したり、面談者が「お前なんかやめちまえ!」といった暴言を吐いたりすると、退職強要に該当し、違法です。人事部門は、退職強要でトラブルに発展しないよう非常に気を使っています。
「無能なのにクビを切りづらい社員」の特徴とは?
さらに、退職勧奨を実施している/実施した13社に、「成績不良なのに退職勧奨をしにくい社員はいますか。退職勧奨をしにくいというケースはありますか」と訊ねました。そこには3つ、興味深い回答がありました。
(1)エビデンスが弱いケース
「退職勧奨の理由となるエビデンス(証拠)が何より大切です。営業成績が極度に振るわないなどしっかりしたエビデンスがあれば問題ありませんが、管理部門の仕事や不祥事のようにエビデンスに解釈の余地がある場合、ちょっと慎重にならざるを得ません」(製薬・人事部門マネジャー)
(2)人脈が広い社員
「その対象社員が社内外で人脈が広い場合、かなり気を使いますね。SNSで友達が多く、どこで飯を食べたとか頻繁に発信している社員には、退職勧奨についてあることないこと言いふらされるのではと懸念します。といった事情に関係なく、公正に制度を運用するべきなんですが……」(電機・人事部長)
(3)反撃してくる社員
「数年前、私が退職勧奨の面談をした40代の男性社員は、本題に入ろうとしたところ、『その前に』と言って、会社の人事評価制度の不備を延々と指摘しました。完璧な人事評価制度なんてないわけで、丁寧に説明しているうちに時間ばかりが過ぎ、結局本題については突っ込んだ話ができませんでした」(小売・人事部門マネジャー)