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「社会が変革することはない」という刷り込み

武田 先日、自分が担当しているラジオ『アシタノカレッジ』に絵本作家の五味太郎さんがいらして、「みんな、反応するんだけど、考えないんだよね」と語っていました。まさに今の時代、反応することが目の前に溢れ過ぎています。見るもの、読むものを引き受けて、反応するべきことが大量にある。その都度、考えるのがしんどいので、目の前のことにただ反応する。こうすると、深く考えないまま、生活が繰り返されていくんですね。

 物心ついた時から基本的に不景気だった同世代や少し下の世代を見ていると、社会が変わることへのあきらめがあり、風景は変わらないけど、この中でなんとか「自分なりに深呼吸できる場所」を見つけられればそれでいい、という意識を感じます。そこには、社会が変革することはないという、刷り込みのようなものも強くあると思います。そんなことないって、と思いながらも、なかなかにしんどい状況下で深呼吸する場所を見つけたのであれば、それを一旦壊してしまうかもしれない、「もっと社会に意識を向けよう、大きな波にしていこう」という呼びかけに、ためらいも生じてしまうんです。

「劇的な変化」は意外なところから出てくるもの

内田 その運動に参加していることが楽しいというのでないと、世の中を変えるような広がりは持てないと思います。義務感や使命感でやっている運動では、人は動かない。なんか楽しそうなことやってるなと思って、何となくかかわって、やってみたら面白くて、つい熱くなってしまう……というのが政治的熱狂の自然な盛り上がり方なんです。そういう「楽しい運動」が同時多発的に起きる時にはじめて体制変革が起きる。

©️iStock.com

 だいたい劇的な変化っていうのは「こんなところで、こんな人たちによって?」と驚くようなところから出てくるものなんです。変化は必ず起きる。でも、いつ起きるのか、どこで起きるのか、誰が起こすのかは予測できない。そして起きるときは同時多発的に起きる。

武田 歴史を俯瞰する視点を持っているからこその言葉ですよね。上の世代の方々のほうが、世の中の大きな変化にたいする楽天性のようなものがあります。それを内部留保せずに、分けてほしいな、と思うことがよくあります(笑)。今日は刺激的なお話をありがとうございました。

内田 こちらこそありがとうございました。次回はぜひ対面で(笑)。

『コロナ後の世界』

内田 樹 (うちだ・たつる)

 

 1950年東京生まれ。思想家、武道家、神戸女学院大学名誉教授、凱風館館長。東京大学文学部仏文科卒業。東京都立大学大学院人文科学研究科博士課程中退。専門はフランス現代思想、武道論、教育論など。『私家版・ユダヤ文化論』で小林秀雄賞、『日本辺境論』で新書大賞を受賞。他の著書に、『ためらいの倫理学』『レヴィナスと愛の現象学』『サル化する世界』『日本習合論』『コモンの再生』、編著に『人口減少社会の未来学』などがある。

『コンプレックス文化論』

武田 砂鉄 (たけだ・さてつ)

 

 1982年東京生まれ。出版社勤務を経て、2014年からフリーライターに。著書に『紋切型社会――言葉で固まる現代を解きほぐす』(朝日出版社、2015 年第25回Bunkamuraドゥマゴ文学賞受賞、2019年に新潮社より文庫化)、『芸能人寛容論——テレビの中のわだかまり』(青弓社)、『日本の気配』(晶文社、2021年に筑摩書房より文庫化)、『わかりやすさの罪』(朝日新聞出版)、『偉い人ほどすぐ逃げる』(文藝春秋)、『マチズモを削り取れ』(集英社)などがある。幅広いメディアで多数の連載を持ち執筆するほか、ラジオパーソナリティとしても活躍している。

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