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 要人警護を担う警視庁のSP(セキュリティ・ポリス)を演じた同作のため、岡田は格闘技や武術を習い始めた。トレーニングを続けるうち、フィリピンの伝統武術であるカリ、香港出身の映画スターであるブルース・リーが創出したジークンドー、総合格闘技のUSA修斗のインストラクター資格も取得し、ファンからは「師範」とも呼ばれるようになる(※6)。

「殺陣師として来てもらいたい」

『SP』はその後、映画にもなりシリーズ化され、岡田はアクション俳優として地歩を固めていく。『ザ・ファブル』(2019年)などでのアクションシーンを見ると、彼のまったく無駄のない動きに引き込まれずにはいられない。なお、殺し屋が主人公の人気コミックを映画化した同作で、岡田はアラン・フィグラルズとともに「ファイトコレオグラファー」としてアクションシークエンスの設計にも携わっている。

 日本人アクションスターにとってその力量が問われる時代劇も、岡田の大きな活躍の場となっていく。乗馬を習っていたこともここで存分に生かされることになる。前出の『燃えよ剣』でも、岡田演じる土方歳三が、明治初年の箱館戦争において馬で敵陣に乗り込む悲壮なシーンがクライマックスとなっていた。

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映画『散り椿』公式Twitterより

『燃えよ剣』では「殺陣」のスタッフとしてもクレジットされている。岡田が殺陣師を任されたのは、2018年の映画『散り椿』が最初である。このとき、監督の木村大作に「次回作で殺陣のシーンがあれば、出演がない場合でも殺陣師として来てもらいたい」とまで言わしめた(※7)。

「海外進出」を勧められるが…

 アクション映画の撮影は危険と隣り合わせで、常にリスクを抱えている。そのなかで岡田は《ものづくりにおいて、効率や安心安全は必須です。ただ、それが最優先されると新しいものは生まれにくい。どこか戦っているところがないと、と思います》として(※8)、絶えずチャレンジを続ける。今年6月に公開された『ザ・ファブル』の続編『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』でも、団地に組んだ足場が端から崩れていく“団地パニック”のシーンでのアクションに命綱1本で挑んだ。

『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』公式サイトより

 周囲からは、その身体能力を生かすなら海外に出たほうがいいともよく勧められるという。しかし、岡田はあくまで日本で堂々と世界に誇れるものをつくることにこだわる。仮に海外で1~2本映画に出たとしても、その先のヴィジョンが見えない、というのがその理由だ。

 だが、日本から世界に売れるものをつくれば、向こうから「出てほしい」と言われるかもしれない。《そのための準備はずっとしてきましたし、これからも続けたいと思いますし、いつかそれが生かされたと本当に思えるものを日本で作って、気を吐いていたいですね。できれば40代のうちに》とは、長らく努力を重ねてきた者にしか言えない言葉だろう(※9)。

 V6が解散し、これまで以上に自分のやりたいことに力を注げるようになったいま、岡田の挑戦はますます拍車をかけるに違いない。

※1 『日経エンタテインメント!』2021年11月号
※2 『週刊朝日』2021年10月8日号
※3 『婦人公論』2004年12月22日・2005年1月7日号
※4 『日経ビジネスアソシエ』2005年8月2日号
※5 『Oriijin』2020年Spring(『ダイヤモンド・セレクト』2020年5月号)
※6 『キネマ旬報』2019年7月上旬号
※7 『キネマ旬報』2018年10月上旬号
※8 『an・an』2021年6月2日号
※9 『キネマ旬報』2021年2月上旬号