女子ツアー大会が世界一開催されている国・中国
そんなジョコビッチが「このまま大会を開催するのはおかしい」と言いきったのは、女子だけでなく男子のツアーも含めた話である。このコメントを引き出した質問は、「中国での男子の大会は開催されるべきと思うか」というものだった。
中国から撤退するということが、テニス界全体にとってどれほど大きなリスクを負った警告であることか。
中国ではコロナ前の2019年、ツアーレベルの大会だけでWTA9大会(ファイナル図含む)、ATPは4大会が開催され、それぞれが運営する下部ツアーも、『WTA125Kシリーズ』1大会と『ATPチャレンジャーツアー』12大会があった。中でもWTAツアー9大会というのは全米オープンを含めてのアメリカの8大会を上回る。世界でもっとも多く女子ツアー大会が開催されているのが中国なのである。ちなみに日本には2大会しかない。
特筆すべきはその急増ぶりで、今から10年前の2011年には広州と北京の2大会しかなかったのだ。中国が経済のグローバル化を進める中で、1年を通してワールドツアーが展開されているテニスは、実質的にもイメージ的にもうってつけだった。開催都市は全て、中国が経済特区や経済開発区などに指定している都市だが、男子よりも女子の大会の招致が進んだ背景には、国内での女子のテニス人気の高さがある。
グランドスラムの本戦に10人送り込んだ日本女子も参考に
中国は90年代後半から、女子テニスの強化に力を入れてきた。女子は世界の選手層が男子に比べてまだ薄く、体格的に劣るアジアの選手でも成功しやすいと睨んだからだ。90年代にグランドスラムの本戦に最多11人も送り込んだ日本女子の活躍ももちろん参考になっただろう。また、テニスは88年のソウル五輪で64年ぶりにオリンピックの正式競技に復帰しており、2008年の北京五輪開催が決まったことも強化の取り組みに拍車をかけた。
成果は早くも2000年代になって表れ、04年のアテネ五輪で孫甜甜(ソン・ティアンティアン)と李婷(リー・ティン)がダブルスでテニス競技では中国に初めて金メダルをもたらした。グランドスラムでも06年の全豪オープンで鄭潔(ジェン・ジー)/晏紫(ヤン・ジー)が中国人として初優勝。このペアは同じ年のウィンブルドンも制している。