すぐ近くに姉妹店が…
ホテル千扇。雰囲気のいいレトロなホテルだ。調べてみるとここは、ホテル富貴の姉妹店らしい。
ホテル千扇は富貴よりも古い1964年に創業。現在は毎週土曜日の13時~18時まで、休憩のみ営業している。また、時々イベントも開催されているようだ。
いつか千扇にも行ってみたい。そう思いながら4年が過ぎたある日、SNSを眺めていると、ホテル千扇で写真展が開催されることを知る。入場料だけで、写真展とともにホテル千扇の部屋に入ることができるようだ。
いよいよその日を迎えた。京橋に着くと、慣れた足取りでホテル千扇へと向かう。千扇は富貴と違い、古めかしい昭和の旅館といった風情だ。扉を開けると、真っ赤な絨毯が目に飛び込んできた。入場料を払うと館内は自由に写真撮影OKとのことで、心ゆくまで撮ることができた。
控えめで上品な昭和テイスト
千扇は富貴に比べて豪奢な装飾はないものの、控えめで上品な昭和テイストだ。レトロ好きはもちろん、お忍びのカップルや、あらゆるホテルに行き尽くした上級者まで、幅広く好まれそうである。まず目に留まるのは吹き抜けのある大階段。城のような幅のある優雅な階段をあがれば、女性は誰でもお姫様気分である。
ホテル千扇の見どころは、館内のいたるところに施された装飾だ。さまざまなタイプが散りばめられ、上品な豪華さと格式の高さがうかがえる。廊下の突き当りにはもうひとつ階段が。
入り口の大階段よりこじんまりとしているものの、狭い空間にエレガンスが詰まっている。廊下や階段を照らす照明も非常にあでやかだ。よく見ると形がそれぞれ違い、植物が絡まっているものもある。
千扇の部屋は富貴と違ってそれぞれなにかテーマがあるわけではなく、全室シンプルな部屋が並んでいる。とはいえ間取りや内装はすべて違う。逢瀬を重ねるたびに(もちろんひとりでの利用でも)楽しめるだろう。
扉を開けると飛び石と敷石で作られた日本庭園調の玄関が奥へ伸び、一瞬で温泉街の旅館にでも来たかのような特別な気分になる。
レトロなタイルがふんだんに使われた浴室には、現代から見ると少し狭い浴槽がある。しかし当時の家庭は銭湯に行くのが主流だったことから、プライベートな風呂は大変貴重で人気があったそうだ。
部屋は洋室と和室があり、洋室にはベッドが置かれ、和室には畳の上に布団が敷かれている。
ベッドや布団の横にあるカーテンや小さなふすまを開けるとそこには鏡が現れる。これは少しでも部屋を広く見せるため、また自身の体を映すためのものだとか。のちに全面鏡張りの部屋へと進化するラブホテルの歴史からすると、控えめで品のある仕掛けである。