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 完全歩合制の百科事典の訪問販売は、いきなり社内表彰を受けるくらい成績優秀だったのですが、上司から「今月の目標を言いなさい」と言われると、「午前中で1万円稼ぎ、昼までに仕事を終わらせて、午後からパチンコでそのお金を増やすことが、今日の目標です」と言い返す。朝から夜まで働いた経験がなかったので、その日の目標=売り上げを午前中でさっさとこなして、その後はパチンコがしたかったんです。

 そんな感じで自分が思ったことを素直に言うもんだから、お前は生意気だという理由でそこもクビになりました。ついには学生金融で借金するという、どうしようもない体たらくです。で、あんまりお金がないものだから、空のビールやコーラの瓶を集めて現金交換してもらおうと酒屋さんに行ったことがあって、そこで世の中にはいろんな商売があることを発見したんです。

「なまってると、そんなに面白いのかあって単純に思ってましたね(笑)」と話す石田社長

広告業を始め、人脈が広がり成功

――それは何だったんですか?

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 広告です。といっても大それたものじゃなく、地元の商店の壁に貼ってあるような広告付きの地図。僕が汗だくで重たいビールやコーラ瓶のケースを担いで200円前後のお金をもらう横で、「集金でーす」と若いお兄ちゃんが紙切れをペラッと渡して、8千円の大金をもらっていった。これは何だ?! と。店主に聞いたら「地元のお店の広告が入った地図だよ」と教えてくれました。さっそく白い地図をコピーして、見様見真似で広告付き地図を作り、ひとりで広告をもらうために商店街に売り込みをかけたんです。

 そこでよく聞かれたのが、「君、なまってるね。どこから来たの?」「福島です」。すると相手はニコニコ。僕は、へえ、なまってると、そんなに面白いのかあって単純に思ってましたね(笑)。「若いねえ、いくつ?」「20歳です」「ひとりでやってるの、えらいねえ」。ニコニコしていると、品川にあるお米屋さんのご主人が僕をすごく気に入ってくれた。「君は何も知らないな」とお叱りをいただきながら、いろいろ親切に教えてくれて。その方は町会長だったので、人や仕事もたくさん紹介してくれました。それが自分で商売をするようになった最初のきっかけです。要は偶然なんですが、広告入りの地図の商売が成功し、若くして年商4、5千万円を稼ぐようになりました。それというのも、飛び込みできた世間知らずの若者を地元の年配者が可愛がってくれたおかげ。いまでも大変感謝しています。