目の前には荒れ果てた舗装路が……
航空写真で見つけたポツンと舗装路はまだこの先なのだが、道が繋がっていないので迂回する必要が生じた。いったん国道まで戻り、ダートの荒れた林道からアプローチを試みる。何度も車の床下を擦り、ズルズル、ゴツン、カキンという嫌な音を聞きながら、慎重に進んだ。
ゴリゴリのダート路を走ること30分、ようやく目的地に近づいた。これまでの悪路が嘘のように、センターラインが引かれた舗装路が目の前に広がっていた。何度経験しても、これは感動の瞬間だ。
下呂市のポツンと舗装路は、1キロほど続いていた。路面はやはり荒れ果てていて、アスファルトから生える草が中央分離帯のようになっていた。
慎重に車を走らせていた時、目の前を大きな動物が横切っていった。野生の鹿だ。鹿が軽快に跳ねながら、道路を横断していったのだ。驚いたが「動物注意」の道路標識と同じような光景を見ることができて、嬉しかった。
やがて舗装路は突然プッツリと途切れ、その先は切り立った崖になっていた。絵に描いたような行き止まりだ。
まるで異世界のような光景
それにしても、舗装路の前後はどこにも繋がっていないというのに、ガードレールが設置され、センターラインまで綺麗に引かれている。完全に仕上げられているからこそ、違和感が凄い。高規格な道路が荒れ果ててしまっている姿は、どこか現実離れし、異世界に迷い込んでしまったような感覚に陥る。
浮世離れした計画がもたらした非現実的な世界。その背景には、大人の事情や既得権益の闇、横領事件も絡み合う。税金の無駄使いのなれの果てともいえるだろう。そうした問題も確かに重要だ。だが私は、航空写真から様々な「?」を見つけ、実際に現地を訪れてその謎を解くことが、何よりも楽しい。次の異世界を求めて、今日も私は航空写真を眺めている。
撮影=鹿取茂雄
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