少し時間が空いた時、私はスマホの地図アプリを開いている。コロナ禍であっても、地図上でならどこにでも行けるからだ。航空写真やグーグルアースによって、疑似旅行が簡単に楽しめる。
9月のある日、いつものように航空写真を眺めていると、気になる光景が目に留まった。場所は岐阜県山県市の山中。木々が生い茂る山の中に、2車線の立派な舗装路が延びていた。だが、舗装路を追っていくと、その先は山の中で突然途切れ、道が無くなっている。不審に思いつつ、今度はその反対側を追ってみると、500mほどでそちらもプッツリと途切れている――。
つまり、舗装路の両端はどこにも繋がっていないのだ。山の中に突如として現れた“ポツンと舗装路”。まるで、森の中に道路が浮かんでいるようだ。
早速現地に行ってみた
一体、これはどういうことなのか。航空写真を見て、どうしても気になってしまった私は、すぐに現地へ向かった。私が住んでいる岐阜県岐阜市から車で北上すること1時間、舗装路が写っていた山県市美山の山間部に到着した。
県道から外れて山へと向かいながら、私は「今走っているのは立派な道路だが、きっとこの先で航空写真に写らないほど道幅が狭くなり、そこからポツンと舗装路に繋がるのではないか」と期待していた。しかし、車を走らせていくと、道路はあえなく行き止まりになっており、淡い期待はすぐに裏切られてしまった。
道のない山を徒歩で越えることも覚悟したが、そもそも舗装路が存在するということは、道路を建設するために重機などが通ったアクセス路があるはずだ。そこで、改めてルートを検討することにした。こういう時、役に立つのが国土地理院の地図だ。国土地理院の地図には、登山道などの細い道もきちんと描かれているからだ。すると案の定、ポツンと舗装路の中間あたりに出られる細い林道を発見した。
早速その林道へ進んでみたが、車1台分の道幅しかなく、すぐに舗装も消えてしまった。車体を揺らしながら、ダートの林道を慎重に上ってゆく。本当にこんな道の先に立派な舗装路があるのかと不安になった頃……ついに見えてきた。