舗装路の両端を確認してみると……
未舗装でガタガタの林道の先にあったのは、センターラインが引かれた立派な舗装路だった。航空写真で見たのと全く同じ光景が、目の前に広がっている。この時は、感動すら覚えた。
興奮しながら、ポツンと舗装路を走っていく。2車線の高規格な舗装路なのに、路上には無数の落石が転がり、草も生えている。どこからきたのか、巨大な木の根っこまで落ちている始末だ。高規格なのに荒れ果てている道路というのは、なんとも不思議な光景だ。
こんな場所でパンクしたら命取りだ。尖った石を踏まないように気を付けながら数百m走ってみると、そこは行き止まりになっていた。舗装が切れ、草木が行く手を阻んでいる。車を降りて確認しにいくと、その先は山の絶壁になっていた。山を切り崩しながら建設されていた道路が、なぜか途中で止まってしまっているようだ。
反対側の末端に回ってみると、やはり舗装が突然途切れ、その先は沢になっていた。どちらの末端部も建設途中でストップしているように見える。しかし、道路を造る際に、なぜ最初に真ん中を造ってしまったのか。そして、この道路はいったい誰が何の目的で造ろうとし、なぜ放棄されているのか。現地を訪れてみても、疑問は募る一方だった。
浮かび上がった“壮大な計画”
モヤモヤしながら帰宅した私は、すぐにこの舗装路について調べてみた。すると、この道路には「林道関ヶ原八幡線」という名前が付けられていることが分かった。関ヶ原と八幡を結ぶとなると、100キロ近い道のりとなる。
だが、それに留まらず、八幡の先は八幡・高山線、さらにその先は高山・大山線と続き、最終的には県を跨いで富山県にまで至るという、総延長170キロ、事業費853億円に及ぶ壮大な計画が存在していたのだ。私が見た舗装路は、その一部ということだ。林道でこれほどの規模というのは、想像をはるかに超えていた。
そんな計画を知り、さらに興味を持った私は、現場で見たこと、調べて分かったことをTwitterに投稿した。すると、色々な人からリアクションがあった。最も驚いたのは、元東京都知事で作家の猪瀬直樹さんからリプライをいただいたことだ。
『日本国の研究』(文春文庫)を参考にしてください。この問題を冒頭で取り上げています。
— 猪瀬直樹/inosenaoki (@inosenaoki) September 30, 2021
文庫版は古本しかありませんが『猪瀬直樹著作集 日本の近代第1巻「構造改革とは何か」』(小学館刊)に「日本国の研究」が収載されています。
『日本国の研究』(文春文庫)を参考にしてください。この問題を冒頭で取り上げています。
猪瀬さんといえば、特殊法人を巡る天下り問題を世に知らしめ、日本道路公団民営化にも関わっていた方だ。その猪瀬さんの著書に書かれているという時点で、だいたいの察しはついた。
猪瀬さんの著書では、山形県と新潟県に跨る朝日連峰の事例が紹介されていた。東北にも、ポツンと舗装路があったのだ。猪瀬さんは、ガタガタの未舗装路を1時間も走り、そのポツンと舗装路を訪ねていた。