絵を描く仕事が全部なくなってしまった25歳の日
――ネタバレになるので詳細は控えますが、本作ではヒロインの年齢が27歳からスタートし、あるところで一気に3年後へ飛びます。男性もそうだとは思うのですが、明葉のように、特に女性にとって27歳からの数年間はさまざまな決断が待ち受ける時期ですよね。有生先生はこの年代の時、どんなことに悩んでいましたか。
有生 大学卒業後、わりとすぐに小さな漫画の仕事をいただけたんですが、25歳頃に絵を描く仕事が全部なくなってしまって、ゼロからのスタートになってしまったんです。投稿しても箸にも棒にもかからないし、その時は筆を折って違う職に就くか、はたまた結婚するか、やっぱり漫画家という夢を追いかけ続けるのか……。この3択でとにかく悩んでいた時期です。
30歳前後は「一番悩む時期」
――作中でも偽装結婚した明葉をはじめ、未婚・既婚・事実婚、子どもの有無、キャリアの積み方など、アラサー女性のいろんな生き方や選択肢が提示されていました。
有生 結婚と仕事、出産の分岐が一番よく表れる時期なので、30歳前後って一番悩む時期ですよね。だからこそ作品の中では「どれを選んでもいいんだよ」と言いたかったんです。
仕事を突き詰めるもよし。家庭を築く道に行くのもいいし、バランスをとって両立するのもあり。どれかひとつだけを挙げて「これが正解!」という描き方だけはしたくなかったんです。
――女子会の描写も、それぞれの意見を受け止めはするけど、誰も互いをジャッジしません。
有生 私の周りで見ていても、「私は子どもまだだから置いてかれちゃうな」「いやいや、私なんて結婚すらしてないし」とかって女の子同士で言いながら、結局最後は「完璧なんてないし、それぞれのタイミングだよね」、という感じがいつも落としどころになっていくんです。
相手を羨ましいなと思っても、じゃあその子のような暮らしがしたいか、その子みたいな生き方ができるのかといえば、実はそうでもなかったりして。最終的には結局、「自分、悪くないんじゃない?」と……(笑)。