『天使なんかじゃない』『スラムダンク』…「浴びるように読んでいました」
――有生先生は結婚のご経験はありますか。
有生 非公開でお願いします(笑)。結婚の漫画を描くに当たり、「既婚/未婚」が分かってしまうと作品に先入観を与えてしまうかなと思い、そういう意味では、年齢も性別も自分からは言わないことにしています。SNSもやってないですね。面倒くさがりっていうのもありますが、作品にだけ集中してもらえたら、という気持ちです。
――とても作品を大切にされているんですね。
有生 デビューも遅かったし、それこそセンスがあるわけでもないので、120%やってはじめて漫画家として一人前になれると思っていて……。こう言うと漫画一筋できたような感じですが、それぐらい漫画が好きだったというだけなんです。
――「原点」になった漫画はなんですか?
有生 矢沢あいさんの『天使なんかじゃない』や水沢めぐみさんの『姫ちゃんのリボン』といった、90年代初頭の『りぼん』には大きな影響を受けています。
少年誌でも『スラムダンク』や『幽遊白書』、『ドラゴンボール』みたいなレジェンド的な作品が小さい時に連載されていたので、マンガを浴びるようにして育った感じですね。
好きなことをして生きるためには…
――地方のご出身ということだそうですが、有生先生のようなキャリアの方は珍しいですか。
有生 周りを見ていると、多くの友人が早い段階で結婚しています。とりわけ女の子は9割方でしょうか。都心部より結婚へのプレッシャーがきついと思いますし、まだまだ女性一人で食べていける職が地方にあるかというと、それも難しい。だから結婚して「チーム」を組んでいく方が多いのかなと思います。
ただ、私個人は好きなものを諦めたくない気持ちがすごく強くて、より自分が自由に生きるために自立していたいし、力をつけたいという気持ちが若いときからありました。
――好きなことをして生きるために経済力が必要だと。
有生 自分が自立していたら選択肢が増えますよね。例えば結婚するにしても、年齢、職業、経済力、相手のスペック関係なくどんな人を好きになっても、そのとき自分に生活力があれば、その人と結婚する道も開けるのかなって。
とはいえ、誰もがそんなにうまいこといくわけじゃないですよね。私はたまたま漫画家になれましたが、あの30歳手前の分岐のとき、この先どうなるのかなんて全然わからなかったですし。
ただ、『婚姻届』含め、私は作品を通して働く女性をフィーチャーしてきました。そういう意味ではロールモデルにはまっていくのではなく、もっと自由に、女性が自分の好きなように生きることを肯定できる作品をこれからも描いていきたいです。