「結婚ってなんでするの?」――そんな根源的なテーマをラブコメの糖衣でくるんだ漫画『婚姻届に判を捺しただけですが』。今秋、清野菜名と坂口健太郎の共演でTVドラマ化もされた話題作だが、その作者である有生青春(ゆき・あおはる)さんが今回、メディアに(ほぼ)はじめて登場してくれた。

「結婚しているのに恋愛相談をし合う夫婦」という型破りな作品の背景にある、現代人的“結婚観”について、有生さんに聞く。

ADVERTISEMENT

――2017年から連載がスタートした『婚姻届に判を捺しただけですが』は、義姉への恋心を隠すために別の女性と形式上の結婚を望む百瀬柊と、柊にお金を借りたいがために彼の希望をのんだ大加戸明葉が「偽装結婚」をします。この発想はどこから?

有生青春さん(以降、有生) かなり前から、「結婚しているのに恋愛相談をし合う夫婦」という設定だけは頭にあったんです。あんまり深い意味はなくて、本当にぼんやりとアイデアだけあったという感じで、そこからストーリーを膨らませていきました。

『婚姻届に判を捺しただけですが』より ©有生青春/祥伝社

「事実として法律婚をする人は皆、判を捺す…じゃあその先は?」

――『婚姻届に判を捺しただけですが』というタイトルもインパクトがあります。

有生 キャッチーさを一番に考えつつ、判は捺してはみたけど、「で、その後どうなんだい?」という問いかけをしたかったんです。

――たしかに世間では「結婚=ゴール」という印象が強いですけど、実際は判を捺した後から結婚がスタートしますよね。

有生 結婚を機に2人の関係性に変化があったという人もいれば、何も変わらないという方もいて。ただ事実として法律婚をする人は皆、判を捺す。じゃあその先はそれぞれどうやって「夫婦」をやってくのか、みたいなことがタイトルから伝わればいいなと思いました。

「選択と変化の積み重ね」で常に変わり続ける“結婚”

――作品に通底するのも、「結婚ってなに?」「夫婦ってなに?」というストレートな問です。

有生 生活ってある程度ルーティンで、敷かれたレールを進んでいくような感じですよね。特に子どものときは学校に毎日行って、夏休みがきて、運動会があって、1年生の次は2年生になって……みたいな、そういうルーティンの中に変化がある。

 ただ、学生から卒業して社会人になったら、毎日大体何時くらいから仕事をして、休みが来て、また1週間が終わって……と、変化ってあるようでなくなってしまう気がするんです。

 そんな大人になってからの日常において、「結婚」って本当に「選択と変化」の積み重ねだと思っています。

『婚姻届に判を捺しただけですが』より ©有生青春/祥伝社

 そもそも、するかしないかという選択がまずありますよね。そこで結婚したいとなっても、相手と同じ気持を共有できないと結婚には行き着けない。奇跡的に結婚が決まったとしても、その後も式を挙げるのか、子どもはどうするんだと、ずっと選択と変化を積み重ねているなと思ったんです。