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5ミリの変化で…マニアックすぎる「好みの世界」

――お話を伺っていると、本当に技術で困難を乗り越えていく「メカニック」という感じですね。「機械の世界」という印象です。

塩月 加熱式たばこには「デバイス」が必要になる以上、どうしても設計の進歩が重要になる面もあります。ただ、たばこは「嗜好品」ですから、やはり感覚の世界も重要です。

 たとえば、デバイスに差し込むスティック。Ploom Xの新発売に合わせてリニューアルしたほかに、メビウスとキャメルの3銘柄を新発売しました。レギュラータイプには、たばこの葉から葉脈と茎を取り除いた葉肉部分「ラミナ」をブレンドしましたが、これにたどり着くまでも大変です。

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 というのも、たばこの葉は産地や種類によって香りや深みも全く変わります。もっとも良いブレンドを探していく、コーヒーやウイスキーのようなブレンダー職人の世界になっていきます。

 そんなブレンドの世界は流石にマニアックでなかなか目に見えませんが、それこそ目に見える範囲でも微妙な工夫はされています。新しいスティックが従来の製品より5ミリ長くなっているのは、デバイスを手に持ったときの距離感を考慮した結果です。

「タバコはあくまで嗜好品ですから」

――5ミリ!? まさに「好みの世界」の話ですね。

塩月 そもそも加熱式たばこの市場が広がったトリガーは、健康意識の高まりや、周囲に対する配慮、喫煙環境の変化にあると考えています。

 僕自身、家に子どもがいるので、家族といるときは加熱式で、会社の喫煙所では紙巻きを吸っています。味や吸い応えは好みによると思いますが、僕からしたら両方おいしい(笑)。その場に応じて気持ちよく喫煙するための手段が、加熱式か紙巻きかの違いです。たばこはあくまで嗜好品なので、本人が一番おいしいと思ったものを吸ってくれるのが一番ですね。

 

構成=石井謙一郎
写真=文藝春秋