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五輪イヤーに「福岡国際」と「びわ湖毎日」マラソンが相次ぎ終了 東京や名古屋にあって2大大会になかった“大きな変化”とは?

2021/12/04
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 名古屋ウィメンズマラソンも、以前はエリート女子選手のみの名古屋国際女子マラソンとして開催されていたが、2012年から形を変えて、「世界最大の女子マラソン」としてギネスに認定されるまでの大型大会になった。

市民ランナーも参加資格記録を突破すれば参加できるが…

 また、日本国内のエリートレースには、2月の別府大分毎日マラソンや12月の防府読売マラソンもあるが、いずれも2000年代に参加資格が緩和され、1000人超の市民ランナーも参加している。

 それぞれの参加資格は、別府大分はフルマラソンで3時間30分以内、防府読売は4時間以内と、真剣に競技に取り組む市民ランナーにとっては目標にしやすいのが特徴。東京マラソンや名古屋ウィメンズマラソンとはまた違った観点から、人気を博している市民参加型の大会になっている。

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福岡国際マラソン1987年大会のスタート風景。エリートランナーが鎬を削る ©文藝春秋

 一方で、福岡国際マラソンとびわ湖毎日マラソンも、市民ランナーに門戸が閉ざされていたわけではなかった。オリンピックや世界選手権の選考レースの側面をもつ一方で、参加資格記録を突破すれば、実業団や大学のチームに属さない、いわゆる市民ランナーでも出場することは可能だった。とはいえ、その参加資格は、趣味で走っているランナーには到底手が届かないほど、難関だった。

 福岡国際マラソンでは、2004年の第58回大会から参加資格を緩和したBグループが設けられており、福岡国際を目標とする市民ランナーも多かった。ただ、その参加資格は年々高くなっており、簡単に出場できるわけではなかった。反面、そのために大会の風格が保たれているともいえた。

ニューイヤー駅伝との兼ね合い

 しかし、大都市マラソンは市民参加型が主流となり、伝統ある大会といえども“エリート至上主義”では大会の継続が立ち行かなくなった。びわ湖毎日マラソンが市民参加の都市型レースである大阪マラソンに統合されたのも必然の流れだったといえる。

 福岡では11月に14000人規模の福岡マラソンも開催されており、福岡国際マラソンとの統合も検討されたが、コースの面など様々な事情から叶わなかったという。

伊藤国光(鐘紡)、宗猛(旭化成)、瀬古利彦(SB食品)が争った1980年大会 ©AFLO

 大会終了の理由はいくつも考えられるが、毎年12月第1週に開催される福岡国際マラソンの場合、1カ月後に迫ったニューイヤー駅伝との兼ね合いが難しく、実業団の有力選手が敬遠しがちだったのも理由の1つ。有力選手が東京マラソンや海外マラソンなどに流れてしまい、市民ランナーの参加フィーだけでなく、大会の継続に必要なスポンサー集めにも苦労があったのではないだろうか。