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殺人の濡れ衣を着せられる

 農村部へ行き始めてからようやく分かってきたのが、ドライバーは単に車を運転してくれる人ではなく、調査者にとっては時にボディーガードのような存在でもあるということだ。前科者のドライバーは果たしてボディーガードとして信頼できるだろうか。強面を連れているのは有利に働くかもしれないが、同行者に襲われてしまっては元も子もない。スレーシュの告白に際して、こういう冷静な計算を私はすべきであったかもしれない。だが、ついついいつもの好奇心が勝ってしまい、「なぜ刑務所に行く羽目になったの? 一体何をしたの?」と私は半ばワクワクして聞いた。

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「容疑は殺人だったんですよ」

 えー! こうなるともう心臓がバクバクしてきてしまう。

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 私の興奮を知ってか知らずか、スレーシュは淡々と答えていく。

「私の妻がね、自殺したんです。首をくくってね。実は前から恋人がいたみたいで。薄々気づいてはいたんです。でもそのうちおさまるだろうと思って、ほうっておいたんです。それがある日突然死んでしまって」

「それは本当に不幸なことだけれど、それならあなたが捕まる理由はないでしょう?」

「彼女の両親が、僕が殺したんだって訴えたんですよ。もちろん彼らも真実はどこにあるのか分かっていたんですけど」

「え? どういうこと? 彼女の両親は自殺だと分かっていたのにあなたのことを殺人で訴えたの?」

「そうですよ。彼らはそうせざるをえなかったんです。実は後で謝られましたよ。でも分かってくれ、こうするしかなかったんだってね」

 もちろん真偽のほどは分からない。私は亡くなった妻の両親からは話を聞いていないのだ。だがそんな濡れ衣の罪で刑務所まで行った割に、スレーシュは妻の両親に怒りを覚えているようでもなかった。

 スレーシュは裁判の際に裁判官に言ったそうである。「あなたが、僕が殺人を犯したと思うのなら有罪にしてください。そのことであなたを恨むことはしません。でも僕はやってません」と。その堂々とした態度が功を奏したのかどうか分からないが、その裁判官は無罪と判断した。だが、その判決が出るまでの数ヶ月間、スレーシュは刑務所に入れられていたのである。

 なぜ、スレーシュの自殺した妻の両親はスレーシュを殺人で訴えたのか?