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「毎日忙しいよ。草むしりに畑仕事。夏場はキュウリ、ナス、トマト。それが終わると白菜、小松菜、ジャガイモかな」

「毎朝5時に起きて作業を始める。もともと農家なので苦はない」

©iStock.com

 電話口のトーンとは、あきらかに異なる様子だ。とくに畑仕事の話は弾んだ。座って話をさせてもらえないかと提案してみたものの、やんわりと断られ、立ち話を続けることになった。

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「今は家でやることがあって忙しい。これから荒れた垣根を切ったり、屋根にペンキを塗らないといけない。やることはいっぱいある」

「できることなら働いてみたい。でも今はコロナに感染するのも感染させてしまうのも恐ろしいし、家のことで手いっぱいだから」

 一雄さんは現在の状況について、しきりに「忙しい」と言った。その真意はわからなかったが、会話が弾み始めたので少しずつ家族の話などを聞いてみた。

仕事のストレスで一時は体重が30キロ台に

「生まれてから今までずっと、この家に住んでいる。両親と兄の4人暮らしで、父は建築関係の職人をしながら、家族で稲や野菜を育てて自給自足の生活を送ってきた」

「母が十数年前に突然倒れ、亡くなってしまうと、男3人の生活が始まり会話はめっきり減ってしまった」

 そして、母親が亡くなったのと同時期に一雄さん自身も重い病気を患い、当時の仕事を辞めざるを得なかったと明かしてくれた。一雄さんは、20代の頃から10年あまりにわたって高齢者施設の介護の現場で働いていたという。そこは利用者が約100人、職員は50人にのぼる比較的大きな施設で、自ら望んだ仕事ではあったが、当時、介護現場に男手は少なく、力仕事の多くは一雄さんに回ってきた。日中の利用者への対応を終え事務作業をこなすと、帰りが日をまたぐような一日も珍しくなかった。さらに冬場は雪で車が使えず、片道2時間かけて歩いて職場まで通ったという。こうした生活を10年も続けたというのだ。

「10年続けたというのは長いとは思わない」

「仕事にやり甲斐を感じたこともあったが、お年寄りが相手で大変なことも多くストレスは大きかった」