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「1万2000円って相手に提示したら高いっていわれました」

 夫の収入は手取り35万円なので、世帯は貧困ではない。しかし、夫は自分のためにお金を使いたいと徹底している。そして、妻と子どもは貧困状態に陥っている。格安の都営団地暮らしで、お小遣いをくれる実家が近くにあるのでなんとかなっているが、それももう限界という状況のようだ。コロナによって夫の財布のひもはさらに固くなり、学童に子どもを預けることも、空き時間にアルバイトをすることもできる状況ではないという。

 希美さんはパパ活をはじめて、まだ1週間だった。

「はじめたばかりなので、メッセージがきた男性と話しながら探っている状態。20代前半に援助交際の経験はあって、そのときもらっていたのが3万円だった。だから、いまの年齢考えると半分くらいかなって。携帯代が1か月1万2000円だから、最低でもその金額は欲しくて1万2000円って相手に提示したら高いっていわれました。もっと安くしろって。20年前は5万円だしてくれた人もいたのに、けっこう愕然としています」

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 希美さんの外見は年齢より老け、地味なお母さんという印象だ。夫はパチンコと競馬が趣味で、手元にお金をもっておきたい。コロナになって、さらに生活費をだすことを渋っている。希美さんは最低限必要な下着を買うこと、携帯代を払うことができない状態になっていた。

 希美さんは夫に経済的虐待にあって、6歳の子どもがいるので時間が制限されるなかでコロナ禍になってしまった。アルバイトをすることができないので、パパ活をすることに決めたが、そこで男性たちに執拗に値切られているという状況だった。

 あらゆる制度は世帯の収入で測られるため、一般的な世帯収入がある家庭は誰も助けてくれない。家事や育児を任されている妻と子どもは世帯主に問題があると、厳しい状況に追い込まれる。カラダを提供することを覚悟しても、男性たちからもっと評価を下げろという圧がかかって八方塞がりとなっている。

 コロナによって家庭も自分自身も正常運転ができなくなるという、希美さんが陥っているようなパニックはあらゆるところで起こっている。コロナによってさらなる貧困が直撃した女性は実家に帰る、借金する、昼職に転職する、長時間労働する、男性に頼る、福祉に頼るなど、危機を切り抜ける方法はいくつか考えられるが、子どもがいる希美さんはどの手段をとることもできない。だから、パパ活に望みを託した。それも黄信号が灯っているようだ。

【前編を読む】「一般庶民ができるわけがない」1回のデート費用は14万円…夫婦関係の破綻から“パパ”になった男性(56)が語る“パパ活”をする意外な目的

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