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確定死刑囚の揺れ動く心

 ──確定死刑囚の処遇で気をつけていることは何でしょうか。

「東京拘置所には確定死刑囚が60数人います(当時)。彼らの心情は変化しやすく、拘置所は、そうした変化に細心の注意を払っています。一般の人は普通、死ぬことについて病死ぐらいしかイメージを持っていません。しかし確定死刑囚は執行で死ぬ現実を突きつけられています。やむを得ないと思っている人もいれば、冤罪だから納得できないと思っている人もいます。彼らはいつお迎えが来るかわからない心情で平日の朝を迎えています。だからこそ、綿密な動静視察が必要となってきます。

 また確定死刑囚は、執行されたくない気持ちも抱えているわけで、どうすれば執行されないかということを考えています。再審請求すれば執行を免れると考えている人もいるかもしれないし、執行を免れるために、逃走、自殺、あるいは職員を殺傷して刑事事件になれば公判中は執行されないと考える人もいるかもしれません」

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 ──心情の変化とは何でしょうか。

「確定死刑囚は、自分を取り巻く外界の変化で気持ちが変わります。例えば、死刑廃止論者が法相に就任すると(死刑執行がないのではないかと)期待します。逆に言えば、執行が続くと不安になる。再審無罪のニュースがあると、自分も再審が認められるのではないかという期待を持ったりもします。家族や支援者が亡くなるということでも、大きく心情が変化します」

 ──執行があったことを死刑囚は知り得るのでしょうか。

「執行に関する新聞記事は黒塗りにしません。昼のラジオニュースで執行が報道されたら、夕方に録音したものを(独房や共同房に)流します」

担当は有能なベテラン職員に

 ──職員の精神的ケアはどうしていますか。

「担当職員は毎日会っているので当然、一定の感情がわきます。個人個人の確定死刑囚の処遇が、全体の中で公平かどうかを注視しています。支援者から得た情報で、自分はほかの確定死刑囚に比べて差別されていると思う人もいます。そういう人は訴訟、国会議員、弁護士、役所などあらゆる手段を用いて、自分は不遇だと訴えようとします。

 処遇する職員はたいへんだから、ベテランの有能な人が担当として当たっています。担当職員は神経をすり減らしますから、定期的に交替しないといけません。確定死刑囚の処遇には、上層部を含めて組織的に対応することが重要です」