張高麗前副首相から性的関係を迫られたことをSNSに告発した後、行方が分からなくなっていた中国の女子テニス選手・彭帥(35)。この問題について、女子テニス協会(WTA)は、「非常に深刻な問題に信頼できる方法で対処していない」として、香港を含む中国で開催されるすべての大会を中止することを公式HPで発表した。積極的に中国市場に進出してきたWTAが、強気な対応を貫くことができた理由について報じた「週刊文春 電子版」の記事を全文公開する。(初出:2021年12月2日号。年齢、肩書等は掲載時のまま)

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中国が問題収束を急いだ背景

 張高麗前副首相との不倫関係を告発した、中国の女子テニス選手・彭帥(35)が消息不明となっていた問題が、急展開を見せた。

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 11月19日に中国のジャーナリストがSNSに彭の写真を投稿し、国営メディアもテニス大会の開幕式に出席した彭の動画を掲載。そして21日には、中国の習近平国家主席と親しいと言われている国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長が、テレビ電話で彼女と連絡を取ったと発表。彼女も「安全で健康だ」と語ったというのだ。
 

五輪3大会に出場している彭帥

 中国が問題収束を急いだ背景には、国連など国際社会からの批判と、女子テニス協会(WTA)のスティーブ・サイモンCEOの強気な姿勢がある。

 サイモン氏は中国国営放送が、彭が書いたとされるメールを公開した際には、「彼女が書いたとは信じられない」と声明を発表。適切な調査がされない場合、中国市場から撤退することも厭わない考えを示した。

 この十数年で、WTAは積極的に中国市場に進出してきた。08年に開催されたトーナメントは2大会だったが、来年は10大会。撤退すれば深圳市が30年まで約10億ドル(約1140億円)でホスト契約を結んだWTAファイナルズ、中国企業が結んだ約1.2億ドル(約130億円)の契約なども無くなりかねない。